Short3

□Covered all over with wounds.
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或る島或る道理。
女と医師は離されて、男達のみ海に落つ。
女と医師はもてなされ、男達のみ空腹で。
女と医師は嘲って、男達は倒れ込む。
女と医師は永住し、男達は海に出る。
但し、男達が生還した場合のみ――


「これが、次の島への言い伝え?」


「えぇ」


湯気のたった紅茶とフォンダンショコラを運んで来た料理人が考古学者のメモを眺めれば、考古学者は静かに頷いた。船長達も集まって、彼女の話を聞いている。


「ってことは、お、おれ達はボロボロになって空腹にされてチョッパーとナミとロビンにバカにされて、生きてたら三人を置いてくってことか?」


「えぇぇぇぇ、おれ絶対そんなことしないぞっ、ウソップもみんなも大好きだっ。だから置いてかないでくれよう」


「チョッパーさん、落ち着いてください。た、た、ただの言い伝えですよ」


「お前も落ち着け。振り回されるのはどうかと思うぜ、確かに」


「それでナミはあんなに機嫌悪ィのか」


「女を完全にバカにしてるわっ」


一様な反応が起こる中、船長もまたむうっと不満そうにむくれていた。料理人からメモを取り上げてびりびりっと破いて、不満げな声を漏らす。


「こんなん信じるなっ」


「ル、ルフィ?」


「おい、ロビンちゃんのメモ…」


「おれの仲間は絶対こんなことしねぇし、おれ達は仲間を置いてったりしねぇっ。失敬ないー伝えだっ。サンジっ、おやつっ」


「……ったく」


料理人はため息混じりに船長の怒りに応じてやった。フォンダンショコラをおぼんに持って行きさっとだせば、熱ィ美味ェと呻きながらもたちまち船長の胃に消えていく。負けじとそれをとる男共に、フォークを突き刺しながら不満そうな航海士を宥める考古学者。料理人は大きくため息をついた。


「サンジィ、空のおぼん」


口元をチョコに染めている狙撃手がおぼんを宙に掲げながら言えば、口、と一言入れて、


「…万が一を、考えとくか」


「え?」


「クソ剣士や船長がやけにぴりぴりしてるし、おれも嫌な予感がする。レディ達と非常食を誘拐されるのは腐ってもごめんだが、万が一、な」


口元のチョコを拭いながら狙撃手は不機嫌そうな剣士や船長を見、キッチンに入っていく料理人を見た。慌ててキッチンに続く狙撃手を見て、今度は船大工が準備を行う。音楽家も同時に未だむすっとしている船長の足止めをし始めた。


一連の流れを見て考古学者は小さく微笑んだ。心配そうに歩く船医をひょいっと抱えて、笑う。


「みんな優しいわね」


「ロビン?」


「みんなの為に、すぐに動いてくれるなんて」


航海士もその言葉を聞いていた。バカね、と少しだけ口元を緩め、ログポースをそっと突き、大声を張り上げる。


「もう後二時間で島に着くわよっ!」


船長達の強張った表情が少しだけ和らいだ。



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