Short3

□Hand match with sword.
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「おぉぉぉぉ!」


ある日のキッチンにて、歓声が湧く。料理人が器用に包丁を動かしていた。端から見れば一刀で玉ねぎをみじん切りにしているように見えて。船医が顔を輝かせていた。


「サンジはすごいなぁ、なんでそんなに包丁使えるんだ?」


「お前が必死に医学の勉強したのと同じでな、必死に練習したんだよ」


みじん切りした玉ねぎをフライパンで炒めながら、嬉しそうにした船医に笑いかける。狙撃手が笑いながらそう言えば、と手を叩いた。


「おれすげぇのみたんだぜ。サンジが包丁二本で食材を切ってたんだ」


「ホントか!?」


「ウソじゃないの?」


「ホントだよ!なぁ、サンジ!」


「あー。でも包丁はパフォーマンスの為にあるんじゃねぇからなぁ。時間がないときしかやらねぇよ」


玉ねぎの火を止め、ひき肉を入れて炒める。丁寧な手つきで塩胡椒を加え、ケチャップ等で味付け。ごくりと船長が唾液を飲み込んだ。


「うまほー」


「うめぇんだって」


「しししっ、だなっ」


大皿に火が通ったそれを敷き詰め、ふんわりマッシュポテトを乗せた所で、剣士と音楽家が入ってきた。どちらとも汗をかいているようで。骨張った顔にも水滴が浮かんでいる。料理人は一息ついて、音楽家には牛乳を、剣士には特製スタミナドリンクを渡してやる。


「お前ら今日も激しくやってたな、手合わせ」


「ブルックが手ェ抜くからな」


「ご冗談を!骨の髄まで本気ですよ!ゾロさんが強すぎるんです!」


音楽家が慌てながら牛乳を飲み干してむせた。船医が背中を叩いてやるのを呆れて見ながら、剣士は船長の方に視線を向けた。


「ルフィもやるか、手合わせ。午後の相手がいねぇ。ブルックは歌詞を書くらしい」


「おれなー、ウソップとチョッパーと海王類釣るんだ!だからダメだ!悪ィっ!」


「そうか」


「サンジ君とやればいいじゃない」


「え!?ナミさん!?」


航海士の唐突な言葉に、料理人は驚いた。船大工が付け足す。


「包丁そんだけ使えんだから刀も扱えるだろ」


「喧嘩より手合わせで片付く方が有意義よ」


「確かに」


「う…」


航海士と船大工が言えば、料理人は困った顔をした。狙撃手や船長が気がついて口を出そうとしたが、剣士はスタミナドリンクを飲み干して、


「軽くやるからたまには付き合え」


「な」


「戦闘じゃねぇ。手合わせだ。流儀にゃ反さねぇはずだ。足でやったら手合わせじゃねぇし」


「別に足でやっても意味はあってるわよ?」


「気分の問題だ」


料理人は少し考えたが、


「…仕方ねぇなァ、わがまマリモ」


「あァ!?」


剣士の言葉に、料理人はため息混じりに同意する。船長や狙撃手達が顔を輝かせて言った。


「よぉし、釣りしながら見るぞー!」


「見るぞー!」


「…見世物じゃねぇって」


「いーじゃねぇか!」


「よーし、サンジ!ゾロ!これを使え!」


狙撃手が取り出してきたのは、剣だった。だが、料理人が首を傾げて刃先に触れれば、全然痛くない。柔らかいゴム素材のようだ。


「おもちゃか?」


「ちゃんばら用だ!これなら大丈夫だろ!」


「真剣で…」


「なんだ、どんな刀も扱えなきゃダメだろ!」


「これは刀か?」


「刀だっ!」


剣士が狙撃手に不満を零す一方、料理人はおもちゃの刀を持ち少し安堵したように笑って、調理の続きに戻った。



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