Short4
□The Train's Christmas
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「よーし、やるぞぉ!」
「んにゃー」
「お前はねこかっ!!ルフィおーきーるーぞー!」
「ウソップ、チョッパーが起きてしまうわ、少し静かに」
「大丈夫だって、ロビン。今日はたっぷり遊び疲れるくらい遊んだからチョッパーもぐっすりだっ」
クリスマスイヴの深夜、船医を除いた麦わらの一味はみんな甲板に集合していた。欠伸を零すものや、やる気十分なもの、立ったまま寝ている者いろいろいた。
だが、今回のクリスマスは前回のクリスマスと大きく異なっていた。まず、サニーにまったく飾りが施されていない。いつもはきらびやかな飾りがサニーを彩り、甲板で楽しく騒ぐはずなのに。二つは、料理人の料理がまったく見当たらない。香り一つしてこない上、料理人本人は眠気を覚ますように煙草をふかしている。
「あとは、どうするんだっけ…ナミふぁん」
「下準備はしたでしょ。うまくやってくれるわよ、フランキーが。私たちは所定の位置にいくだけ」
「アウ、任せとけ。なんたって今回はおれ様のアイデアと」
「ウソップ様のアイデアが融合した」
「スペシャル」
「クリスマスバースデー!!」
「イエーイ!!!」
「あいつら気合い入ってるな…ふぁーぁ」
深夜早々ポーズを決めた船大工と狙撃手、効果音をつけてやった音楽家を見ながら、剣士は欠伸を零した。当たりめぇよ、船大工は気合い十分で腕を振りながら、懐から何かを取り出す。
「あとは任せろ。うまくやるぜぇ」
「おう、任せた」
「ルフィ、いくぞっ」
「むにゅー」
一味はそれぞれ船からひょいと飛び降りた。ゆっくりぞろぞろと歩きだし、眠たげ船長を音楽家がオロオロしながら引っ張り、迷いかけた剣士を考古学者と航海士が嗜め、料理人と狙撃手が楽しげに会話を交わしながら、船から離れていく。
船大工はゆっくり手を振りながらそれを見送った。豪快に、でも静かに甲板を歩き、すーすーと男部屋で一人遊び疲れた寝息を立てている船医を見て笑いながら、側にそっと懐から何かを置いた。そしてゆっくりと、甲板に出る。
「…さぁ」
船大工はサニーの船壁を撫でながら、ニィと笑う。どこからともなく聞こえる、大きなベルの音。ジリリリリ、と島民と一味に伝える。何をか?それは。
「最高のクリスマスと誕生日にしようぜぇ」
船大工が見上げた星空には、蒸気を吐き出し、窓から黄色い明かりを漏らす夜汽車が渡っていた。
――The TRAIN Christmas――
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