Short4
□Chocolate Fondue
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チョコレートフォンデュってやったことあるか?噴水みてぇに噴き出すチョコレートにフルーツやらパンやらいろいろつけて、チョコレートの甘味と素材のハーモニーを楽しむのさ。おもしれぇだろ。
おれは麗しいレディ達のために、いっちょバレンタインにやろうと思ってるわけだ。バレンタインは美しいレディからチョコもらう日だってのはわかってるが、逆バレンタインも燃えるだろうが!
だがな、それをやろうって時にハナことウソップから普通にやるんじゃおもしろくねぇって言いやがった。だがあいつに任せたらめちゃくちゃなことになりかねねぇ。
例えばよくわからねぇ植物を「うまいから!」とかいう理由で一口大に切り分けて……あぁ、想像したくねぇ。レディにあげるチョコレート。そんなのナミさんが泣いちまう。
だからといってもう完成してる機械の方をいじろうとしたらダメだ。改造大好きクソメカフランキーにあれ以上やられちゃ、チョコフォンデュがコーラフォンデュになっちまう。茶色く噴き出すしゅわしゅわコーラにフルーツをつける様子を想像してみろ。
……ん?案外うまそうじゃねぇか。フルーツポンチ的なノリで。い、いやいやダメだ騙されるなおれ。ロビンちゃんの悲しい顔はみたくねぇ。
ってわけで。こうなりゃ一流コックのおれが何かしら工夫をしなきゃいけねぇわけだ。もちろん機械は苦手だからよ、素材の方で、な。
「うーん」
だが、船長との船番がてらこうやって今本を山ほど積み上げていろいろ調べちゃいるが、アイデアがなかなか出ないもんだ。そりゃそうだ。チョコレートってのはわりと何にでも合う万能なもんだ。普通の料理のソースとしても使ったりもするんだぜ。想像できねぇだろ?
「ダメだっ」
なかなかアイデアが思いつかねぇから、一息がてら紅茶でもいれよう。そう思っていたら、だ。
「サーンージー!!きてみろよ!!」
ちょうどいいところに響いた釣り中の船長の大声。いい気分転換になるかと思い外に出たら、そこにはおもしれぇ光景が広がっていた。
「おもしれぇだろ!!こんなの新世界じゃねぇと見えねぇぞ!しししっ」
あいつが笑う通り、そこには北や東の海じゃ絶対に見られない光景が広がっていた。
ふわふわの雲が、どうやってか。
赤や青や黄色にオレンジ。緑に紫に水色に。全部全部白っぽく、まるで虹みてぇに広がっていた。
「……これだっ!!」
そん時ぱっと思いついたアイデア。これはバレンタインのスペシャルチョコフォンデュにぴったりで、工夫もばっちりなはずだ!
「サ、サンジィ、なんだよっ!!おれにも教え――」
ルフィの声なんかしらねぇ。今おれはこのアイデアを実現させたくて仕方ねぇ。
だから、ぎゃーぎゃー喚くあいつの口に、骨付き肉を一つぶち込み、おれは頭を働かせ始めた。
―――
「サンジ君、きれい」
「素敵ね」
アシスタントウソップでフランキー特製のちゃんとチョコが出るチョコフォンデュ機械の側に、そっとフォンデュされる食材を置けば。レディ達から歓声がもれておれはガッツポーズした。
おれが用意したのは、ふわふわのわたあめとマシュマロ。だが、ただのわたあめとマシュマロなんかじゃねぇ。
「こっちは、虹色の花びらを象ったわたあめ。美しいロビンちゃんを表します」
「ふふ、ありがとう」
「んで、こっちはキュートなカラフルハートのマシュマロの花さ。ナミさんにぴったりだろォ!!」
「ええ、完璧っ」
「あとは定番フルーツとパン。こっちは触感を変えたり、甘すぎて酸味が欲しい時のために」
「フォローもばっちりね」
フルーツとパンの皿を置き、つまみ食いしようとしたバカ共を蹴飛ばしてから、おれはレディ達に串を渡す。
「さぁ、召し上がれ。てめぇらは後だヤロー共!」
「ぶー」
「いただき」
「ます!」
ロビンちゃんは上品に、ナミすわんはキュートに、それぞれわたあめとマシュマロを口に運んでくれる。あぁ、いい笑顔だなぁ。
「サンジ君、おいしい!」
「おいしいわ、コックさん」
「幸せェ!!!!」
あぁ、なんていい日なんだ!レディ達に最高の笑顔でそう言ってるもらえるなんて!!
「じーっ」
「食わせろアホ」
「じーっ」
「ずるいぞ!おれ甘いもの好きなんだっ」
「じーっ」
「私もスイーツたべたーいっ!」
だが、レディ達に感動してる最中、集中するヤロー共の視線。まったく、仕方ねぇ。
「おら」
串を残り分差し出せば、あいつらの顔が嬉しそうに輝いた。串をとり、食材を突き刺して。あーあー、盛り付けが台なしだ。
「…でも、まぁ」
どいつもこいつも満足そうだから、許してやるか。
「サンジ、なにぼーっとしてんだ!」
「お前も食えよっ。うめぇぞ!」
「サンジ君、あーん」
「あーん」
「んなっ!!ナミさんロビンちゅわん!!!幸せだぁぁぁぁ!!!!」
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