Short4

□5周年記念連続小説
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『海軍』


「今日はシェフ一人か」


「あー。あいつらも忙しいからな」


「何を言う。この店も繁盛しているだろう」


「まぁな、ぼちぼちだ」


午後。休みがとれたらしい先生はトンカツ定食を平らげた後紅茶をたしなんでいた。先生はいろんなものを食っていってくれるからな、作りがいがあるぜ。


昼時落ち着いてから先生がきたからか、今はゆったり紅茶を嗜みながら仕事したり喋るレディやらヤローがちらほら。おかげでおれもゆったりエビフライカレーを平らげて、先生と紅茶を飲む余裕すらあるんだ。


「先生最近はどうだ、立派な軍は育ってるか?」


「こっちも、ぼちぼちだァ。つい甘やかしてしまう」


「アインちゅわん、だったか?美しいレディ」


「あいつは強い。いい腕を持ってる。少々世話焼きで、カロリーを控えろと口を酸っぱくされた」


「そりゃまた、うらやましいねぇ。おれもレディに――」


「アーニキィ!!!」


「アーニキっ!!!」


せっかくおれがレディへの愛を語ろうとしてんのに、と思って見てみりゃ、見覚えのあるヤロー共がひーふーみーよーいつ、5人。


「あれは、G5の連中か」


「ゼ、ゼファー先生!?」


「アニキ!なんでゼファー先生がここに!」


不思議そうな先生、びくびくするバカ共。そりゃそうか。一応同じ職場だし。


「シェフ、知り合いなのか」


「あー。ちょっと危ないとこを助けてやったんだよ」


「助けた?」


「近場の工場でちと大火事があって、ルフィが飛び込んでってな。そこでまー、いろいろあったが、煙に巻き込まれて倒れそうなこいつらを蹴飛ばして運んでやったんだ」


「ほぉ」


先生は興味深そうにした。でもこの話クソ長ぇしな。こんくらいで十分だろ。


「そうです、先生!我々は黒足のアニキに恩があるのであります!!」


「アニキ!!」


「アーニキッ!」


「うるせぇな!席についてろっ」


「へいアニキっ」


おてふきと茶をだして招いてやれば、奴らは素直にゼファー先生の隣にぴしっと座った。そういやこいつらはケムリンの部下だったから、先生は上司の上司になるのか。そりゃまたおもしれぇ縁だな。しかもケムリンには使わねぇような真面目な敬語だしよ。


「お前ら、仕事中か」


「はっ、交代で休憩中であります」


「近くを通り掛かったのでアニキの店で絶品の食事を頂くのであります!」


「美味であります!」


「確かにな」


そりゃあ当然のことだが、先生も同調はしなくていいんだぜ、まったく。


「よろしければ、おれ達が先生のも払うであります!」


「おれではなく私たちであります!失礼しました!」


「いやぁ、いいさ。若いもんから巻き上げることはしない。おれが払ってやる」


「おい、先生」


「やったー!!」


「やったーじゃねぇよ、ったく」


でもまぁ、見た所先生は慕われてるらしいな。仲良さそうにきゃっきゃと話しててよ、とても先生が鬼教官っぷりを発揮してるとは思えねぇんだが。


「アニキー!注文いいっすか!」


「いいっすか!」


「いいっすか!」


「うるせぇ!どうせややこしいもん頼むんだから紙に書いとけ!!」


「あーいっ」


客に対する態度じゃねぇって?あー、まー、いいじゃねぇか。むしろ敬語なんざ使った日にゃ、あいつらに風邪だの熱だのやかましく言われちまう。


「アニキ!注文です!」


「あいよ」


「いったい何を頼んだんだ」


先生が立ち上がって覗き込んできた。てへ、とか気持ち悪いこと言ってるてめぇら、そりゃレディの特権だ。


「『アニキ特製あんかけチャーハン、アニキ特製麻婆豆腐定食、アニキ特製から揚げ定食、アニキ特製八宝菜定食、アニキ特製麻婆春雨定食』」


「中華ばかりだな」


呆れたように先生が言う。あぁ、まぁな。こいつらはそんなもんだ。


「それ以前におれ特製は当たり前なんだからイチイチ書くな!」


「ヘイアニキ!」


「アニキ!」


「うるせーっ!静かに待ってろ!」


おれはツッコミをやめてとりあえず料理を作ることにした。わくわくだかなんだかわめいてるが、そういうのは口でいうもんじゃねぇし、言ったとしてもレディ限定だろ。まったく。


「おら、特製中華大盛りだ!」


「うぉー!うまそー!」


「バカ!アニキのはなんでもうめぇんだ!!」


「ですよね!アニキ!」


当たり前だから、黙って食えという前に、あいつらはいただきますときちんとわめいて食い始めた。茶碗から米粒を掻き込み、おかずと一緒に流し込むその食いっぷりときたら。どこぞの野郎を思い出すくれぇだ。


「アニキ!今日も美味であります!!」


「あります!!!」


わかってることだから黙って食えってんだ、まったく。言うことまでどこぞの野郎に似てやがる。


「お前ら!シェフの飯を食ったんだ。いつもの倍は訓練に励めぇ!!」


「サー!!先生!!!」


「サー!!」


先生もなぜかうれしそうでノリノリ。あいつらもノリノリ。いいこって。しっかりお国のために働いてくださいよ。
おれ?おれはいつも通り、うめぇと言われるもんを作るだけさ。


「アニキご飯おかわり!」


「おかわり!!!」


「おかわり!!!」


「自分でつげ!!!!」


―――
初書きG5。兄さん慕ってるの楽しいです^ω^
先生相変わらず好きすぎてたまらないwww


October 2nd
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