Short4

□The hurt never bother us anyway.
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「……これで、100人目です」


とある海軍基地。海兵が震えながら、電伝虫に向かって通話をしている。そんな海兵の側には、縄に縛られた海賊たちが山になって積み重なっている。血にまみれたり、絞められたような跡を残したり、斬撃を受けた後が残っていたり、さまざまだった。


『相変わらずだな、あいつは』


電伝虫から響く声は、海軍の上官の声だった。海兵は、ちらりと海賊達を見て、声を震わせる。


「中将殿、自分は」


『いい。好きにさせてやれ』


「しかし」


『結果的には海軍のためになっているんだ。いいだろう』


静かに電伝虫が切れた。海兵は震えながら受話器を置くと、ちらりと電伝虫側にある報告書を見やる。何度もこの海兵が読み返しているものだ。


『孤高の海軍兵、アームス・モルト。元海軍大佐だが、今の実力は計り知れない。
今は、海軍に所属しているだけ。位はないし、部下も同僚もいない。自分で勝手に建物を用意して、自分だけで海賊を捕らえては近場の海軍基地に転がしていく。何故なら彼は、自分しか信じない。仲間と言う言葉を、繋がりを、憎んでいる。
なぜ、信じないか。それは――』


海兵はそこでなぜかひぃっと悲鳴を上げた。報告書が、まっぷたつに斬り裂かれたからだ。丈夫なブーツがライトに照らされるのと同時に、海兵の前に転がされた海賊。どうやら生け捕りにされて震えていたようだった。


「101人目だ」


現れた男は低い声で言った。筋肉隆々の巨大な体に纏う海軍コートは、まっすぐ縦に裂かれている。鼻に×印の斬撃の後が残り、鋭い眼光と共に目立っている。髪はまるで針金のよう。銀髪が細くうねっていた。


「今日中に、また連れてきてやる」


海軍コートをなびかせながら、ゆっくりと遠ざかる男の手。麦わら帽子の男の表情を筆頭に×を刻まれた手配書が揺れていた。


「仲間に裏切られ朽ちた、哀れな仲間バカ達をな」



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