Short4

□おさとうサンタ
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クリスマスと言えば、普通はどんな料理を作るだろう。


綺麗に整備されたキッチン。そこにあるオーブンではチキンの皮が脂を弾ける音を小さく立てて、フライパンでは付け合わせのニンジンのグラッセを。あとはマッシュポテトやスープもつければいい。ブロッコリーやトマトやチーズでツリーサラダなんてのもいい。


ケーキは、どうしようか。とろーりとろけるチョコがのった、いやいや、ふんわりと口の中で甘酸っぱいイチゴとクリームが溶け合う、まてまて、ここは雪のように白くて滑らかなチーズを使って。あぁ、どれも美味そうだ。


「サンジィ」


「うぉおお!?」


「うぉぉぉ!!?」


料理人は、思わず叫び声をあげた。話しかけた船長も思わず叫び声で返してしまった。ここは、確かにキッチンだ。綺麗で整っている。オーブンもある。しかしまだチキンの香ばしい香りもグラッセの甘い香りもしていない。


「何で叫ぶんだ!!びっくりするじゃねぇか!!」


「こっちの台詞だクソゴム!!人が真剣にレシピ書いてるときにおどかすんじゃねぇ!」


レシピぃ?と船長が怪訝そうにノートを覗いた。そう、先程あげた料理は、ノートに殴り書きされ、インクの香りと一緒にいるだけのもの。まだ、料理にされるのを待ちわびているだけのものだ。


「そっか!クリスマス飯か!!」


「そのネーミングどうにかしやがれ。まだ言い方があんだろ」


まったく、と呻いて料理人はレシピをパタンと閉じた。わかった思い出すと言いながら、船長はうーんと考えるが、頭からもくもくと煙か出始める。


「ダメだ熱が出てきた」


「どんだけバカなんだお前!!」


「うーんうーん、あ」


船長はあがっと口を開けた。


「なんか思い出したか」


「おれサンジに用あったんだ!」


「それも忘れてたのかよ!」


料理人はびしっとツッコんだ。船長はしししっと笑う。


「まぁいいじゃねぇか!思い出せたんだから」


「ったく、で、なんだ」


「チョッパー!!来いよ!」


船長が急に叫ぶと、ひょこっ、と船医のお尻が出てきた。そして、続くように、彼の顔もひょこっと半分だけ。料理人は、頭をかいた。


「逆だぞ」


「!!!」


船医は慌てて体を扉に隠した。それでも、ひょっこりと頭が出ていたのだが。


「隠れるのが好きなのかおれに慣れてねぇのかどっちだ。アラバスタで一緒に戦った仲なのによ」


「ち、違うぞ!!どっちも違うぞ!」


「じゃあ、なんだ」


料理人が尋ね返すと、船医はちらと船長を見てから、ぼそりと言った。


「サンタ……」


「ん?」


「クリスマスにくるサンタクロースって、どんな格好なんだ、サンジっ!!」


「あァ!?」


料理人は、驚きに呻いた。尋ねた船医はその彼のリアクションに驚いてかさっとまた扉に戻る。


「んな唐突な質問。しかもなんでまた隠れてる」


「だ、だってぇ」


船医はもじもじもごもご言いながら困惑顔になった。料理人はそんな彼をじっと見てから、


「ルフィ」


船長に何かを促す。船長は嬉しそうに頷いて、隠れたがる船医の体を抱えると船長の膝に座らせた。料理人は頷いて立ち上がると、カップにポットに、いろいろひょいひょい準備し始めた。船医は突然の出来事に唖然やらぽかんやらしてから、ようやく改めて船長が膝上の自分を見て笑っているのがわかった。


「チョッパー、そんなにビクビクしなくたってよ」


「!」


「サンジは飲みもんと食いもん出してちゃんと話聞いてくれるぞっ!!」


そんな笑顔混じりの言葉と一緒に置かれたのは温かいミルクと冷めてなおさくさくなビスケット。


「……バーカ。食いもん飲みもんなんて安直な言い方すんな」


そして、ゆっくり彼らの前に椅子を引っ張り、料理人は船医の帽子を叩きながら、


「ティータイム付きと言え」


呆れたように、笑う。
船医は、心が安堵に満ちるのを感じた。



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