そしてその優しさにより






あいつが極度のヘタレで、更に「ツンデレ」だとか言うやつなのか、それともあたしが質の悪い意地っ張りなのか。

(きっと両方ね)

柔らかな日差しが窓から差し込む昼下がり。隙間から入り込む秋の風にカーテンが揺れる。それを眺めながら乱菊は頬杖してそんな事を考えていた。



学年が上がって別々のクラスになった。
特に仲が良い訳でも無かった。寧ろあまり良くなかったと思う。
会話もろくにしなかった。


だけど、張り出されたクラス替えの紙を見て、何だか胸が痛んだ自分が居た。

喋らなくても、傍に居れる奴なんだと、勝手に望んで居たからかもしれない。



クラスが変わって、あたしはあいつに何とか会おうとした。
登校の時間を何気なく被せてみたり、何気なくノートを借りに行ったり。

あくまでも、何気なく。




(あたしが嫌いなんだったら拒めば良いのに)

話し掛ければ応えるし、捕まえても逃げない。


(あたしが嫌いなんだったら、拒めば、良いのに。)




好い加減この思考のループにも飽きた。行き着く答えは何時も変わることが無いからだ。

欠伸を一つして黒板の上の時計を眺めた。後幾分もすれば終業の鐘が鳴る。それまでの辛抱。


向こうから話し掛けては来ない。目さえ合わせてくれない。
あたしに気付いて無い演技が出来ているつもりなんだろうか、だったらあいつは本当にどうしようもない馬鹿野郎だ。


あんな細っこい目をしてるけど、何処を見ているかくらいは乱菊にだって解る。



(あーぁ)


溜息なんぞ吐いたら幸せが逃げるぞ、と、小さい癖に随分と大人な先輩に言われたから、溜息はやめた。頭の中ではするけれど。


鐘の音と同時に乱菊は筆記具をさっさと片付け荷物をまとめると、直ぐ立ち上がり教室を出た。


短いスカートも開いた胸元も、本当に欲しい相手の目には何とも映って無いらしい。





(惚れた方が負けって事でしょ)






「拒まないあんたの優しさが嫌いよ。」

隣の教室から聞こえた機会良いくしゃみに、乱菊は思わず声あげて笑った。











END
学パロ
乱→ギンなかんじ

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