「もうっ、いくらなんでもやり過ぎよっ!!ちょっと、やちる、聞いてんの?」
雛森を救護室まで運んでやってから、乱菊は自室(十番隊の執務室)で、少々声を荒げてその犯人を叱っていた。
屋台に出店する商品を考案すべく、各隊を回って居た時の事。
五番隊は、クッキーを提出してきた。
それも、雛森お手製のメガネクッキー。
それを、一番言っちゃ行けない台詞と一番やってはいけない動作付きで、雛森を打ちのめした犯人、やちる。
これは怒らないと、だめだろう。
いくらなんでも、冗談が過ぎていた。
しかし、当の本人は全く悪びれず、机に腰掛けたまま、足をぷらぷらと、揺らしている。
「だって。」
「『だって』、何よ?」
腕組みして立ったまま怖い顔をしている乱菊を、やちるは見上げた。
「傷って、さわらなきゃ治らないんだもん。」
乱菊の息詰まる、音。
「痛いのから、にげてたら、いつまでだって勝てないよ。」
ね?
いつもと変わらぬ無垢な笑顔で、えへへ、とやちるは笑うと、机から飛び降りて部屋を出ていった。
「…何考えてんだが」
どさりとソファに倒れ込んで一息。心を見透かされた気がした。
「傷は触らなきゃ治らない、か。」
あの日から毎晩夢から消えないのは、最後のあいつの痛ましい笑顔。
「ホント…馬鹿みたい…」
逃げてんのは、どっちよ。馬鹿ギン。
深いため息ついて、瞼を閉じた。
書類を抱えた隊長に怒鳴られるのは、幾分後か。
END
カラブリネタで、乱→ギンな感じ。
やちるって一番色々見透かしてそうだよね妄想。
たくさんの拍手ありがとうございました。