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□【泡になってさようなら】
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「人魚姫?」
『あぁ、いのから借りたんだ』
「昔、チョウジがよく読まされてた本か…」
小さな薄い本の表紙には、金の詩集で人魚姫と書かれていて
肩越しに覗き込む俺は、いつかのチョウジがいのに呼んでいたのを思い出す
『シカマルは読まなかったのか?』
「俺は横で寝てたし、親に読んでもらった記憶もねぇ」
日当たりのいい平野に俺はいつも寝転がって、
なぜか終りになると、涙を零すいのの頭を撫でるチョウジを
ぼんやりと見つめていた
そんな幼き日の記憶
『私も同じだ。砂の里に海はない。だから私も読んだことはないんだ』
そういったテマリになぜか納得しつつ、テマリの握る本に目を落とした
「俺が読んでやろうか?」
何でそんな気になったのかは分からないけれど
『うん』
といったテマリの後ろから手をまわし
肩越しに本を読みはじめる
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