†開カナイ扉†
□Le ciel
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「いい匂い…」
勉強の手を止め、外が暗くなっている事にようやく気付いた
シエルは一度電気をつけ、部屋のカーテンを閉めると電気を消してキッチンへ向かった
キッチンではお母さんのエミリアが忙しそうに動いている
その横のリビングには、不景気のニュースを睨む父さん、ダレンがいた
「さ、もうすぐ出来上がるわよシエル、お爺ちゃんを呼んできておくれ」
エミリアに言われ祖父のグラウドを呼びに行くが、部屋にはいない
「またいない…、お母さーん、いないよー」
返事をしたのはエミリアではなくダレンだった
「…ったく、糞オヤジ!また今日も徘徊か!!」
‐徘徊とは、痴呆症になってしまった老人が家の外に飛び出し、ふら〜っとどこかへ行ってしまう事だ‐
「…いいよお父さん、また私が探してくるから」
シエルは靴を履きながらダレンをなだめた
「飯が冷めないうちに早く帰ってくるんだぞ!わかったな!」
シエルは何も言わず静かに、薄暗い外へ歩き出した