不可思議物語

□月と臆病者
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「そ、それは……!!」
「なんで名前で呼んでくれないの?私の名前、忘れちゃった?」
「おい、それはお前の思いこみだ」


父が慌てたように言う。


「本当に?今だって名前じゃなかった。いつも、あの子とか、この子とか、あいつとか、お前とか。なんで?私のこと、忘れちゃったの?」


気づけば、止まらなくなっていた。


「ねえなんで!?私は何なの!?お父さんとお母さんの子供でしょ!?違うの!?」
「落ち着きなさい、大丈夫よ」
「黙っててよ!!」


肩に乗せられた手を、彼女は振り払う。
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