4月13日金曜日。
□作成中
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「こっちこっち!」
来崎に呼ばれて、僕はバスの5列目へ向かった。
いつの間にか、また「アイツ」に体を乗っ取られていたみたいだ。記憶はあるのに、僕は「アイツ」に逆らえない。「アイツ」は……
「め、目番…」
案内された席の隣りには、目番皐が座っていた。
目番は何も言わない。ただ無言で僕を見た。見つめあったまま、沈黙が流れる。
「と、隣り取れなくてさ、前後だけど…いいよな?!」
「あ、ああ…全然いいよ」
しばらく止まっていた時間が、来崎によって戻された。僕は黙って座席に座る。
それとほぼ同時にバスが動き出した。
「全員乗りましたね?」
「はーい」
口々に答える生徒たち。全員乗ったかどうかは既に確認済みだし、確認するなら発車する前にするべきではないのだろうか。
「運転手・横江、バスガイド・坂井で、皆さんを末松美術館までご案内させていただきます。よろしくお願いします」
バスガイドを見て無駄に騒ぐ男子。鏡を手に化粧をし、甲高い悲鳴にも似た声を出す女子。
僕ら二人はそれと対照的だった。僕はこうして皆を観察している。目番は、鏡ではなく本を持って読書をしていた。
「…酔わないか」
思わず聞いてみた。目番は本から目を話さずに答える。
「別に」
一言だったが、僕は彼女の声を初めて聞いた気がした。
バスガイドの話が終わり、大川がマイクを受け取った。
「今日のスケジュールを確認します。しおりを出して下さい」
大川の指示で皆がバックからしおりを出す。僕もそれに従った。だが目番は動こうとしない。
「目番、しおりは?」
「…この世の偶然について、考えたことがある?」