過去拍手
□雪化粧
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〜雪化粧〜
辺り一面に広がるまっ白な雪化粧。
綿のようにふわふわと降りてきた雪は、掌にのせると一瞬にして水滴へと変わる。
だけどそれがたくさん積もるといつもの風景が一変して、こんなに綺麗な新しい世界を作り出す。
私はそんなこの季節が大好きです。
そんな雪の積もった今日は、ヒノエのお仕事がお休みという事で一緒にこの景色を楽しんでいます。
「とっても綺麗だね、ヒノエ!」
まさか大好きな人とこんな時を過ごせるなんて嘘みたいで、なんだかテンションが上がってくる。
横目でちらっとヒノエを見てみると、うっとりするくらいな笑顔の彼と目が合い、少し照れてしまう。
「あぁ、そうだね。でもお前に勝る程の素晴らしい物はこの世に一つもないけどね。」
「もぅ〜またそんな冗談言って〜。」
なんて熱々トークで私は頬をほんのりと染めつつも、目は自然に雪景色の方に移ってしまう。
私ってなんて罪作りな女なのかしら。
真っ白なじゅうたんに出来ている二人の足跡を目で追うと、なんだかそれがおかしくて苦笑する。
「どうしたんだい?姫君。何か面白い物でもあったのかい?」
「ふふ、なんか不思議だなぁ〜って思ってさ。」
地面に軽く座ってみると少しの冷たさがある中にも、柔らかさも含まれてて‥。
それがとても気持ちいい。
「こっちの世界でも雪って降るんだなぁ〜って思ったら、何だか不思議な感じがして。私の居た世界では降ることはあっても積もることってあんまりないんだよ。」
「積もらないのかい?」
「うん。積もる前にね‥止んじゃうの。」
幼い頃から都会育ちな私は、積もる雪を見た事はあっても触った事はない。
だからいまそれが目の前で起きているっていうのが不思議でおかしいの。
改めて雪の凄さっていうのがわかった。
「そっか…。なぁ姫君。」
「なに?」
「お前は雪が好きかい?」
「うん、大好き!!」
考えるまでもない質問で、私は笑顔で即答する。
自然が作ったとっても綺麗で幻想的なこの雪は大好き!
そんな私を見たヒノエは、同じく満面の笑みで微笑み返してくれる。
「お前の世界では雪を使った遊びが沢山あるんだろう?」
「え…うん。そうだけど、なんで知ってるの?」
「クスクス、この前望美と将臣に聞いたんだよ。大きな雪の塊を作って雪だるまを作るとか‥」
雪だるま……!?
「あと…かまくらを作るんだって?中はもても暖かいそうだけど、本当なのかな?」
かまくらなんて私にとっては未知の世界。
暖かい…のかな?
ふいに顔を上げると、ヒノエは私に向かって手を差し出していた。
「作り方、教えてくれるだろう?」
手を重ねてみる、ぐっと引っ張られて、私を立たせてくれる。
目と目が間近でぶつかり合い、なんだか恥ずかしくて私は顔を真っ赤に染める。
ヒノエと…一緒に。
答えなんて決まってる。
いまだって走り出したい気持ちをぐっと堪えている自分がいる。
私は笑顔でヒノエに抱きついて答えた。
「勿論だよ!ヒノエ♪」
そのまま私は、繋いだ手を引っ張って雪の中を駆け出した。
〜終わり〜
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