過去拍手
□隠し事は程々に
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「何でこんな所に入ったのよ、バカヒノエ!!」
「何でって…そんなの聞かなくても分かるだろう?勿論姫君と二人っきりで、あんな事やこんな事を」
ドカッ!!
「一回死んでくる?」
こんな所とはどんな所か。
いま私とヒノエが居る場所は手探りだけが頼りな何も見えない真っ暗闇。
ヒノエの部屋の小さな押し入れの中なのです。
「愚問だね。俺はいつだって本気なんだけどな。」
「ヒノエ、やっぱりあんたは一回……地獄へ堕ちろー!」
「しーっ…大声を出すと気づかれてしまうよ?口を閉じて。」
そう言うとヒノエは人差し指を私の口元に当てた。
「はあ……ヒノエが変な事ばかり言うからでしょう。もういい加減にしてよね。」
「変な事だなんて酷いね。俺はいつだってお前の事で頭が一杯なんだけどな。」
「…よくもまあ次から次へと恥ずかしい台詞が出てくるものね。どうやらその口は一度塞いだほうがよさそうだな。」
「ふふ…今日の姫君は積極的だね。嬉しいよ。」
「はあ?何でそうなるのよ。」
そう言うと頬に暖かくて柔らかい感触が。
これは……手?
さらっと人撫でした後に指は流れるように私の唇に。
嫌な予感がする…
「ふふ…お前からの口付けで、塞いでくれるんだろう?」
「……はっ!?」
プチンッ
くっ…口付けですってー!?
「誰がするかー!エロバカ男ーー!!」
ゴツッ!!
私はヒノエの頭上に思いっきり拳を降り下ろした。
ヒノエと居ると本当に疲れる。
でもここ最近の私とヒノエは随分と距離が近くなった気がする。
その理由の一つがいま目の前にいるこの…
「にゃーー」
「あっ猫ちゃん、ちょっと静かに!」
この可愛らしい猫ちゃんのお陰なんです。
実は一週間前にヒノエと庭を散歩していたら偶然この可愛い猫ちゃんと出会い。
お腹が空いていたのか猫ちゃんは私の足元に寄ってきて。
か弱い声で鳴きながら頬をすり寄せてくるものだから離れようにも離れられない。
困った私にヒノエは連れて帰ろうかと言ってくれて、二人で面倒を見ることにしたんです。
しかし私には一つ心配な事があった。
「ん?いま何処からか声が聞こえたような…」
「っっ!?猫ちゃん静かに!!」
果たしてあの頭の固い九郎さんに認めてもらえるだろうか…というのが。
だからヒノエとこそこそ隠れながらこの猫ちゃんを飼っているのです。
九郎さんにこの事がバレると色々と面倒だからね。
「キャッ、ちょっとヒノエどこ触ってるのよ!」
「すまないね。何せこの暗闇の中じゃ手探りと音だけが頼りなんだよ。姫君の綺麗な顔もこの中じゃ全く見えないし。」
「だからってむやみに動かないでっ…ふにゃあっ!」
「クスクス…可愛いね。」
絶対にわざとやってるこいつ!!
だってさっきから触ってくる所ってうわ〜な場所ばっかだもん。
やっぱりエロだ、こいつはスケベ男だ!!
「あまり大きな声を出すと九郎に気づかれてしまうよ。いいのかい、見つかっても。」
「誰のせいよ!」
出来るだけ音をたてないように努力はするものの、一緒に居るのがヒノエでは先が思いやられるというものだ。
さっきからちょっかいばかりかけてきて私の心臓は破裂寸前まで追いつめられているし。
いまだ部屋の中でウロチョロ動き回っている九郎さんもなかなか部屋から出ていこうとはしてくれないし。
こんな事なら猫なんて拾ってくるんじゃなかった!!(今さら後悔しても遅い)
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