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□花より美しい君に
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花より美しい君に
(弁慶)
花を愛でる君の後ろ姿はとても幼げで可愛らしい。
目先の花を壊れ物のように大切に扱うその細い指先も。
雪のように柔らかく真っ白な頬も。
花のように美しいその笑顔も。
あなたの全てが大好きです…
「わっ!弁慶さん!?びっくりした。誰かと思いました。」
僕を見る、真っ直ぐな瞳。
吸い込まれてしまいそうです。
「ふふ…すみません。君があまりにも夢中になっていたので、声をかけずらかったんです。」
ちょっと道を外したら君の姿が目に入ってしまって、どうしても気になったんです。
邪魔をするつもりはなかったんですよ?
「そんな、気にしないで言ってくださればよかったのに。…すみません。」
「君が謝ることはありません。何も悪いことはしてないんですからね。それよりこんな所で何をされてたんですか?」
「……ここの花。」
「はい?」
花……
「昨日の強風で枝が曲がってしまったみたいで、何とか出来ないかなって考えてたんです。」
「ああ…そうだったんですか。」
君は優しいですね。
花を愛でる一つ一つの仕草が可愛らしくて見入ってしまったんです。
その細くて華奢な体を閉じ込めて、離したくなくなって。
花ではなく、僕を見て欲しくなって。
ふわっ……
「あの、弁慶さん…!?」
「あまりにも君が可愛いから、抱き締めたくなりました。」
「えっ!?」
「もう少し、このままでいてもいいですか?君の温もりを感じたくなった。」
「いやっ、あの……弁慶さん…!」
「僕に抱き締められるのは嫌ですか?」
「いえ、そういう訳では…!でも……」
腕の中に閉じ込めた彼女は、耳元で言の葉を紡ぐ度に体温が上がっていく。
そんな彼女があまりにも愛しく感じられて、腕に込める力を強めてしまう。
花よりずっと繊細で
花よりもっと美しくて
そう思ってしまう僕はいけませんか?
「少しだけでいいですから。このままでいさせてください。」
今だけは、花よりも僕を見ていてください。
「は……い。」
花にさえ妬いてしまう僕は嫌いですか…?
「ありがとうございました。驚かせてしまいましたね。」
「いえっ…!別に…」
「ふふ……枝が折れてしまわないように、棒で固定してあげましょうか。一時的には助けてあげられますよ。」
「あっ、はい!!」
終わり
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