短編話

□【桜の木の下で】
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僕はどうしてしまったのでしょうか?

一つの物に夢中になるのは久し振りだな。

しかも……女性に…








その女性は桜の木の下でうずくまって泣いていた。

時折独り言をぼやいては涙が流れていき、目が真っ赤になってしまっている。

僕はなぜかその少女が美しいと思った。

いままで目にしてきた女性の中でも一番僕の心を揺らした少女。

こんな事は初めてだった。

彼女を見ると動揺してしまう自分が居る。

「はぁ…これは少々困った事になりましたね。」

小さな溜め息を一つ吐き、弁慶はゆっくりと彼女に近づいていった。

地面に広がる桜の花びらと、砂を踏む音は彼女の耳にも届いているはず。

しかし彼女は僕が目の前に立っても反応一つ示さなかった。

どうやら僕にも気づかない程に悲しみの底に堕ちてしまっている様ですね。

なんて可哀想な少女なんでしょう。

当の彼女は呼吸を乱しながら、何度も何度も涙を拭っていた。

服の袖は雫が染み渡りすでに湿ってしまっている。

どれ程泣いたらそんな風になってしまうのだろう…。

すると不意に顔を上げた彼女はようやく僕の存在に気づいたらしく、驚いた顔をしてこちらをじっと見つめてくる。

「…っ!!?」

……驚いた……。

間近で見た彼女の顔はとても美しかったのだから。

涙で潤んだその大きな瞳。

肌は真っ白でうさぎのようにか弱い少女だと思った。

「あ……あの、だっ…だれですか?」

彼女のその一言でようやく正気を取り戻した弁慶は、初めて聞いた彼女の声に二度目の動揺をしつつ、それが嬉しくてつい笑みが零れた。





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