金狐黒鹿のオブジェ
□1日遅れのクリスマス
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時計の針がカチャリと0時を過ぎたころ。
静まり返った木の葉の里に忌み嫌われているはずの狐面が降り立った。
「過ぎちまったか…。」
曇りがかった空を仰ぎながら狐面の暗部はゆるゆると歩いていく。
電球が絡まった建物を抜け、開けた場所にでる。人気のいない其処には1人ポツンと座る影。
その影を後ろから抱きしめた。
「遅かったな…。ナル」
「悪いシカ…待たせた。」
ポンっと顔部分だけ変化を解くナルト。
下ろしているシカマルの髪を指先に絡めながら、ナルトは着ていたコートの中にシカマルを抱き入れる。
「…動くのがめんどくせぇだけだーっ…」
くすぐったそうに首をすくめるシカマル。
ナルトは真っ赤な耳を甘噛みすると甘ったるく囁いた。
「HAPPY Christmas。シカ。」
「……あっ」
「あっ?」
「…雪だ…。」
「あー本当だ。何年ぶりだろうな。クリスマスの木の葉に雪が降るのはっヨイショッ。」
「おっオイ;」
ひょいっとシカマルの体を抱き上げる。いわゆるお姫様抱っこである。
「…いい加減。体の変化解いたらどうだ。」
「こっちの方が都合がいいんだよ。」
まったりとした時間がながれていく…
シンシンと降る雪を二人で眺めながら
ふと…消える雪と
雲に隠れていく金色の月をシカマルは後ろの人物と重ねた。
いつも思う。
ナルトが裏の任務に出かける度に
この月のように今にも闇に消えてしまいそうで…不安になる。
今だけでも
ナルトが
なくならないように…
自分がいるからと言う意味をソッと込めて
名前を呼ぶ。
「…ナル…。
「ん?」
ナルトの優しい笑みが向けられ、密着した胸から鼓動と暖かさを感じ安堵する。
「…反則。」
恥ずかしさを隠す為に
お手上げと言うように両手をひらひらさせ
シカマルはナルトに笑いかける。
「HAPPY white Christmas。ナル。」
「…その笑顔こそ反則。今夜は待たせた分
あたためてやるってばよ!」
ワザとドベ口調で言うナルト。
「はぁ…程ほどにしろよ…。」
一面の銀世界に包まれながら
木の葉の長い夜はふけていく。
HAPPY Christmas…
貴方にも幸がありますように…。
◎end
→あとがき