短編小説
□不要なマリオネット*
1ページ/4ページ
「た……助けてくれ!何でもする、だから……。」
目の前の男は怯えた顔で俺に助けを求めている。
そんな惨めな姿を晒してまで生きたいか。
俺には到底理解できそうもない。
銃の狙いを男の左胸に定める。
男の目が大きく見開かれたが、そんなことは気にせず無言で引き金を引いた。
目の前が真っ赤に染まる。
別に、罪悪感も嫌悪も感じない。
だからといって、この行為に快感を覚えるわけでもない。
これが、俺の「役目」だから。
――ルルルル
この場に似つかわしくないコール音が静寂の中に響いた。
ジーンズのポケットから、携帯電話を取り出す。
――終わったか?
名乗りもせず、たった一言。
それでも誰からなのかは分かった。
俺に電話をかけてくる人なんて、ただ1人だから。
「はい。」
――そうか。では、次の奴の情報を送る。
そう言い終わったかと思うと、すぐにメールが届いた。
1人の男の写真と、その男の住所などの細かい情報が記されている。
――できそうか?
「もちろんです。」
(――俺は、あんたの人形ですから。)
指定された人間を殺す。
それがあんたにとって、どんな利益があるのか……
そんなことはどうでもいい。
ただあんたのために、俺は生きる。
感情を持たない、マリオネット――