シリーズ・SS

□単発SS集・暗
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死神の少年と軍人














お前も、随分たくさん殺したんだろうけどさ。


MS越しなら、いいんだよ。
……いや、まあ善くはねーけどさ、うん。


でもほら、機体墜とそうが艦墜とそうが、空母沈めようが基地殲滅しようが、偶然視えるか、自分からそう確認しない限り、血も骨も肉もよくは見えない訳だろ?
ましてや軍人ってやつは、敵を同じ人間だって思わない様に、徹底的に教え込まれんのが普通なんだし。
…あーいや、ソレが悪いとかどーとかじゃなくて、さ。


俺?
そりゃあ…御想像の通りさ。
途中合流して五人にはなったけど、それまでは一人で、世界に喧嘩売ってたんだぜ?
装甲車も列車も地対空砲も艦も空母も基地も端から全部ぶった斬ってやったさ。そりゃあ無慈悲にな。


うん?ああそう。ヒイロ達もあんま変わらない事してるだろうな。

カトルもかって?
勿論。

嘘じゃねーって。
そりゃあ可能でさえあれば、戦闘も人死にも絶対出さないさ、カトルは優しいからな。
けど、回避出来ない戦いだったら、一切躊躇しないぜ?あいつ。
寧ろ、自分の仲間を傷付ける奴への冷酷さは、俺らん中でも一番じゃねえのかな。


普段指揮官ポジに居るから気が付かねぇかもしれねえけど、戦い方の荒っぽさは俺や五飛の非じゃねぇぜ?

普通のシールドじゃ防げないあのでっかいショーテルで、有無を言わさずボキッ!ってな。
細かい剣技も勿論得意だけど、本当に殺りに掛かる時は真っ二つか辻裂きがベターらしいぜ。






――…あ、ああ話が逸れたな、何の話してたっけ?

あ、そかそか、MSでの殺しの話、な。ははは、忘れちゃいないって。


要はあれだよ、俺が言いたいのは、















「MS越しでも、生身でも。笑いながらとか、眉一つ動かさないでとか、もう殺すのが解ってて其の贖罪の涙流しながらだとか………そんな風に人が殺せる、俺達みたいになっちゃ駄目だぜって、そう云う事さ。」



――デュオは目の前の若い軍人にそう屈託なく笑い掛ける。

着水に揺れる艦の甲板の遥か彼方、滲みながら沈む夕日を背に手摺りへ寄り掛かる彼は。
まだ幼ささえ残る端正な顔立ちなのに、一度は畜生道へ堕ちた事のある人間の眼差しをしていた。



fin
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