小説

□防衛本能に取り憑かれて尚輝く一番星について
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青い羽が広がり、骨格だけを残して飛んでゆく。
其の骨格からは光の膜が広がり、また新たな羽が形成される。


アムロのνガンダムやシャアのサザビーが使うファンネルとはまた少し違うらしい…然し似た働きをする、遠隔操作兵器であるドラグーンが舞い、無数の光の矢が敵に突き刺さる。


だが、其の光の矢が、攻撃が、敵機体のコックピットに向けて放たれた所を、少なくともコウは見た事が無かった。













防衛本能に取り憑かれて尚輝く一番星について













コウはヘルメットを外し、一つ息をついた

今日は調整を兼ねた1号機での出撃であったから初めこそ少々焦ったが、見ていられないとばかりに通信を入れてくるニナからのアドバイスを受け、無事に勝利をもぎ取る事に成功した。
……女性は偉大、と云う所であろうか。




「コウさん。」

ふと名前を呼ばれ振り返ると、床を蹴って慣性に乗りながら、今回の僚機のパイロット……キラが此方へ移動して来ていた。
コウ同様、機体から降りて一息ついた所だったのだろう、ヘルメットを小脇に抱えている。


「――…キラ、お疲れ様。」


呼び返すのに幾らか間が空いたのは、何と呼ぶか少しだけ迷ったからだ。
ヤマト元少尉、ヤマト准将、ヤマト隊長……どれも間違いではないのだが、向こうが官位ではなく名前で呼んだのだから、此方も名前で呼ぶのが順当であろう。

コウのそんな逡巡を察してか否か、機材に一度手を付いてコウの一歩手前で静止しながら、キラは微笑む。

「お疲れ様です。1号機、モノに出来そうですか?」
「ああ、…暫くは、ニナに怒られながらの出撃になりそうだけどね。」

応えながら軽く肩を竦めてみせれば、キラは笑みを深めた。

戦闘中やその前後はともかく、普段の雰囲気は温厚そのものである此の二人が揃って会話する光景は、実はひそかに年配の整備士達の目の癒しスポットとなっていたのだが、これまた二人揃って所謂天然の気がある為に、気付かれる事はない。


ともあれ、ちょっとした反省会も兼ねた雑談を交わしながら、コウとキラは機体格納庫を後にした。




 
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