小説

□優しい異物
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数十と並ぶ敵は、どれも異様な進化を遂げて様々な姿をした擬態獣。
心を読まれる心配はないものの、フェストゥム相手とは勝手が違う。戦線から一人弾き出された一騎と同調し、苦しい戦いを強いられていた総士はジークフリードシステムの中で歯噛みをした。



『ただの擬態獣じゃない……恐らくダンナーベースの機体の、猿渡さん達の戦闘パターンから学習を繰り返した種だ!』


其の思考は勿論、大脳皮質で繋がっている一騎にも瞬時に伝った。
二本のルガーランスを奮いながら、一騎もまた思う様に戦えない事実に焦りを見せている。

「くそっ、敵の数が多過ぎる!それにこいつら、動きが」

普通じゃない!と叫び掛けた所で背後から攻撃を受け、衝撃と痛みを感じる。


「『ぅあぁッ!!』」


ファフナーと一体化した一騎、其の一騎とクロッシングしている総士は同時に苦痛の悲鳴を上げた。
直ぐに体勢は立て直したが、此の儘ではやられるのは時間の問題である。






『如何すれば…!』


「総士君!一騎君!」




不意、通信が割り込んで来た。
海上に停泊したアークエンジェルを中心に、クロッシングこそ辛うじて出来てはいるが、何処で戦っているのか行方が解らない一騎を捜索しているメンバーの一人、キラ・ヤマトからだった。
彼女の愛機、ストライクフリーダムから、ジークフリードシステム…総士への通信だ。二人分の名前を呼んだのは、総士を通して一騎にも聞こえると判っているからだろう。



「大空魔竜がマークザインの反応を捉えたけど、周りにも擬態獣が多くて直ぐには辿り着けそうにないんだ!」
『そんな!けれどもう一騎はっ、』
「くっ…!」



「大丈夫、僕も手伝う。君達の戦略と戦術、感覚と判断に、僕の空間認識と経験を貸してあげる。」



「『……!?』」




何を言っているのだ、総士が訊き返すよりも早く、ジークフリードシステムに触れた事の無いシグナルが干渉を始めた。


「ドラグーンの制御は神経接続なんだ、其れを応用して、君達の脳に僕の神経伝達をバイパスする!」
『なっ…そんな事が!』
「可能だよ、サコン先生にも手伝って貰って……此のプログラムさえ組めれば…!」

音声に被さって、微かにタイピング音が聞こえてくる。
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