★BOOK★

□不安
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「テイト…?」

いつも目覚めの早いテイトが
今日はことさら早かった。

ギシッっというベットの軋むおとで目を覚ました俺は
着替えて部屋を出ていくテイトを夢うつつの中で見た










「ぅっわ。さみーな」


ようやく意識が
しっかりしてきた俺は
テイトの後を追うことにした。

自分なりに
早くでたつもりだが
もうすでにテイトの姿は見えなかった

「ったく。あいつどこまでいったんだよぉ」




もちろんまだ月の残る朝方
誰も起きている気配はない。



ガサッ


きぬ擦れの音がした

目を懲らしてみると
長い廊下の先の一画のベンチに
ちいさな人影が見えた



「テイト…??」



テイトは静かな廊下に響く声が聞こえたらしくこちらをみた


「ミカゲ?……」

「よぉー随分はやいぢゃん♪」


だが
俺の声とは裏腹に
テイトは不安そうな声で聞いた





「眠れないのか?」












「………そりゃぁこっちの台詞。
…お前、
夜中随分うなされてたな。」


俺は驚いた様子の
テイトの隣に座った










「………すまない」

だんだんと空が
白くなってきたが

ベンチは柱の陰によって
まだ光が届かず
テイトの表情はわからない


「??? ハハ。わっけわかんねーよ。何であやまってんだ??」


暗い面持ちのテイトにかける言葉が見つからずおどけてみた


「いや…………。」

でも
テイトはなおさら沈んでみえた




その時俺は訳はわからなかったが
感じるものがあった。



(もう言う機会はないかもしれない)


なぁテイト……。


俺達、親友だろ??
 
だからな、


お前の痛みは俺の痛みでもある




…だから………



『ひとりで抱え込むな』と。





「ありがとな・・・ミカゲ」
テイトははにかみながら言った


だんだん太陽が
のぼってきたのか
教会に朝がやってきた
一人また一人と朝の仕事に
とりかかりはじめ

薄暗い場所にも隅々まで光がさしてきた



その時気付いてやれば
よかったのに―――――――

あいつのかかえる
『不安』というやつに…
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