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独眼竜と右目のある日
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【独眼竜と右目のある日】



「なぁ小十郎。」

「何でございましょう政宗様。」

微かな風が吹く午後。政宗は自室から外を眺めながら小十郎に話し掛けた。

「もし・・・俺が死んだら・・・。お前はどうする?」

唯一見える左目を細めながら言った。

「・・・そのようなことは・・・ご冗談でもよして下され。」

「Ha!冗談なわけねぇだろう・・・。小十郎、答えてくれ。」

片手に持った盃を傾け、酒を喉に流し込む。

「・・・そのときは、地獄でも何処まででも・・・お供いたしましょう。」

政宗の前で頭を下げる小十郎。

「・・・小十郎。俺は・・・もう殺したくねぇ・・・。」

その言葉に絶句する小十郎。一国の主とあろう者が、天下を狙う者が、人を斬りたくないと言った。

「政宗様・・・。」

「怖いんだ・・・。何でか分かんねぇ・・・。でも・・・怖い・・・。」

黒い髪が風になびいた。

「小十郎・・・。」

そう言った瞬間には、政宗は小十郎に抱き付いていた。持っていた盃が下に落ち、中身が零れた。

「政宗様・・・。」

酷く小さく見える主の体。その背に腕を回し、撫でた。

「俺もいつか・・・俺が殺してきた奴らみたいになるんじゃないかと思うと・・・怖くて・・・。」

涙で声が詰まる。

「小十郎・・・俺は・・・俺はっ・・・。」

小十郎の胸元で泣く政宗。

「・・・政宗様・・・。顔を上げてくだされ・・・。」

そっと政宗の頭を撫で、顔を上げるよう促した。

「こじゅ・・・ろ?・・・んっ・・・。」

政宗の小さな唇を小十郎の唇が塞いだ。

「はっ・・・///ぅ・・・ふぅん・・・///」

舌を絡め合わせていく。角度をずらし、舌を動かすごとに政宗の口から甘い声が溜息のように漏れる。

「はっ・・・///こじゅっ・・・ろぉう・・・。」

紅潮した顔を小十郎に向ける政宗。

「政宗様・・・政宗様は、この小十郎がいる限り死なせは致しませぬ。」

ギュッと政宗を抱き締める。

「政宗様は怯えなくともよいのです。貴方の背中は、この片倉小十郎景綱、命に代えても守り通して見せますぞ。」

「小十郎・・・。」

小十郎は政宗の眼帯をそっと外し、その傷に触れた。

「やっ・・・小十郎・・・そこ・・・きたねぇから・・・。」

そう言って小十郎の手を離そうとしたが、止められた。

「汚くなどござりませぬ。小十郎めは、貴方の右目を斬るときに決心をしておりました。」





「貴方を生涯お守りすると・・・。」

その言葉に再び泣き出す政宗。

「小十郎・・・すまねぇ・・・俺は・・・クソッ・・・俺は・・・。」

中々次の言葉が出せないで自分に苛々する政宗。

「すまねぇ・・・俺は・・・お前を・・・お前に・・・。」

「もうよいのです・・・。無理に言わずとも分かっております。」

優しく撫でる小十郎。

「Thanks・・・。俺はお前らを守る・・・。だから小十郎・・・お前は・・・。」




       俺の背中を護ってくれ・・・

        (END)
 

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