Another World

第一章 存在する異能の力
1ページ/8ページ

「進め!」

鋭い声が響き渡ると同時に,兵士達の乗った生き物が走り出した.
頭には角,四本の指には長い爪,大きく開いた口には鋭い犬歯が光っている.
名は『ヴェノス』.竜の劣勢種族である彼等は,戦車などの兵器と同じように扱われていた.

「やべぇ・・・また来たぞ」

シュミット・ルビンM1889を構えながら翔羅は言った.

「殺せばいい」

冷たい声が隣から聞こえた.来栖は弾を篭めながらヴェノスの群れを見ていた.

「グオオオオオ!!」

人の何倍もの巨体で襲い掛かってくるヴェノス.
彼等はただ殺す事しか頭にない.

「死ね」

翼覇の機関銃三八式が火を吹いた.

「ギャウ!」

「グアッ!」

何匹かのヴェノスと乗っていた兵士が倒れる.
しかし,他のヴェノス達はそれを踏みつけてこちらに向かって来る.

「チッ,止まんねぇか」

もう一発撃とうとしたときだった.

「オオオオオオオオオオン!!」

空気が振動するほど巨大な遠吠え.ヴェノスの動きが止まった.

「よしっ!」

翔羅のカルカノM1938から焼夷弾が発射された.
炎に焼かれていくヴェノスや兵士達の叫び声を聞きながら3人はその場を去った.


「ケホッケホッ・・・の・・・喉が・・・」

亜修羅が喉を押さえている.

「あんな大きな声出すからよ.少しは考えないと」

麻白が呆れたように言った.

「ケホッ・・・だって・・・仕方・・・ない・・・でしょ」

咳をしながら苦しそうに抗議する.

「翔羅たちが来たよ」

紅が亜修羅にを水筒渡しながら言った.

「さっきの遠吠え,お前だろ?」

翼覇が亜修羅を見ながら言った.

「ん・・・.そうだよ.ヴェノスの動き止まったでしょ」

水を飲みながら答えた.

「ああ.助かったありがとな」

翔羅が礼を言う.その言葉を聞き,亜修羅は満足げな顔をした.

「ここはもういいだろ.早く戻ろう」

来栖の意見に皆が同意した.六人は戦場を後にした.


一時間程して,森の中の野営地に着いた.野営地といっても巨木の下に大きめのシートが敷いてあり,その上に薄い毛布が4,5枚そしていくつかの荷物が置いてあるだけだ.
基本テントなどは持ち歩かない.あっても邪魔になるだけだ.

「疲れた」

亜修羅が銃や荷物を投げ出し,毛布に潜り込んだ.

「その前にご飯でしょ.皆腹減ってるんだから」

紅が亜修羅を引きずり出した.文句を言うが,紅に睨まれて黙ってしまった.

「男子は火をなるべく小さく起こして.麻白はウチと一緒に準備,亜修羅は肉の調達.
 最近食べてなかったからね」

紅は皆に指示すると麻白と二人で何処かに行った.

「じゃ,アタシも行って来る」

亜修羅もモンドラゴンM1908を背負って行ってしまった.残された男子三人は火を起こす準備を始めた.
しばらく戻って来た紅と麻白の手には大きくて表面がツルツルした葉と小指の爪ほどの大きさの黒い実が沢山あった.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ