Sanji×Usopp

□◯月×日、晴れ
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よく晴れたこんな日は。
何をしようか。

ルフィとチョッパーを誘って釣りでもしようかな。
それともスケッチブックを片手に、全員の顔でも描いてみようか。
…邪魔すんなって怒られるかな。

そういえばナミがクリマタクトの調子が悪いって言ってたし、今日はウソップ工場を開こうか。
でも、せっかくこんなに晴れてるのに、もったいねェかな。

こんなに晴れた日には。
太陽と同じ色のその髪に触れてみたいと思う。
なんて。純情乙女みてェ、おれ。

風になびく金色の髪の持ち主は、海を眺めながら煙を吐き出している。
その髪は、タバコの匂いがするのだろうか。

すでに金色で埋め尽くされそうなスケッチブックの新しいページに、短くなった金色の色鉛筆で。
ああ、新しい色鉛筆買ってこなくっちゃ。
なんて思いながら。
もう見なくても描けるんだ。その横顔は。
いつも見ていたから。

「おい、ウソップ」

夢中で描いていたら、その金色に名前を呼ばれた。
顔を上げてみたら、おれの方を向いて手招きしてる。
途中まで描いたスケッチブックを閉じて、呼ばれた方に向かった。

「なんだよサンジ。おれ様忙しいんだけど」

なんて、本当は嬉しいくせに。おれのアホ。

「ま、いいから。ほら」

指をさしたのは、海の真ん中。
キラキラと太陽の光が反射して、眩しさに思わず目を細めた。

「あ!イルカ!!」

イルカの群れが船と一緒に泳いでいた。
閉じていたスケッチブックを広げて、今度は青い色鉛筆で、水面から時々顔を出すイルカを描き始めた。

「へェ…やっぱ上手ェな、ウソップ」

気づいたら、サンジがおれの手元を覗きこんでいた。ふわりと、風になびく髪が鼻先をくすぐる。

甘い匂いがした。

そろそろおやつの時間かな。

のんびりと過ぎていく、何気ない時間。
ほんの一時でも、おれの隣にいてくれる事が嬉しいと思う。

キッチンから、甘い匂いが漂ってきた。
サンジの髪と同じ匂い。

「そろそろ焼き上がるかな」

いそいそとキッチンへ向かうサンジを見送る。

見晴らしが良くなった左側から吹く風が、パラパラと金色で埋め尽くされそうなスケッチブックのページをめくる。

「ウソップ」

突然戻ってきた声に、あわててスケッチブックを押さえた。

「…何してんだ」

「イヤ…風が…」

どうやら見られてはいないようで、ほっと胸を撫で下ろす。

「まぁいいけど。ちょっと手伝ってくんねェ?」

「あ…おぅ。今いく」

スケッチブックを抱えて、片付けてくると駆け出した背中に、サンジの声が届いた。

「そのイルカの絵、ちゃんとおれもいれとけよ」

思わず振り向いた先には、サンジの笑顔。

「…気が向いたらな」

やっぱり次の町で色鉛筆を買おう。
海と空の青い色と、青い色によく映える金色の。

にやけた顔を右手で直して、片付けたスケッチブックとイルカの群れに感謝した。

少しだけ2人の距離が縮んだ気がする。

そんな、晴れた一日。

END


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