Zoro×Usopp
□風花
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ちらちらと舞い落ちるのは、雪。
「ウソップ!雪だぁ!」
そう叫ぶのは未来の海賊王。
舞い散る雪にはしゃぐその姿からは想像も出来ないけど、誰にも負けない強い思いと、夢を持ってる。
それを叶えられるだけの力も。
「なあ、なんでこんなに晴れてんのに、雪が降るんだ?」
「さぁな。難しい事は分からねェよ」
ナミにでも聞いてこい。
そう言ったら、にしししっと笑った。
「不思議雪だな、よーするに」
見上げれば、確かに青い空。柔らかな日射しの中舞い落ちる雪は、わずかな風にもたやすく流されて、ゆらりゆらりと落ちては消える。
「積もるかな?」
「ばぁか。こんなんじゃ、積もる訳ねェだろ」
あっさり言われて、ちぇと面白くなさそうな顔をした船長は、なんか面白ェことねェかな〜と、ふらふらどこかへ行ってしまった。
ひとり残され、また空を仰ぐ。
青い空から降る雪。
その青さに恋い焦がれ、その青い姿を誰の目にも触れさせないように、自分の白い姿で隠してしまおうとするように、絶え間なく降り続ける。
それはまるで、今の自分のようだと思う。
恋い焦がれるあまり、その姿を隠してしまいたい。誰の目にも触れさせないように。
でも、あまりにも大きな空は、小さな自分では隠しきれるはずもなく、誰もがその青さに憧れてしまう。
確かに手に入れたと思ったけれど、それはほんの一部分でしかないのかもしれない。
誰にも手に入れることは出来ないのだ。
あまりにも広く、大きすぎて。
「風花か…いいモンだな」
声は、頭上から聞こえた。
振り仰げば、そこには未来の大剣豪。
恋い焦がれるその人がいた。
「ゾロ」
名前を呼べば。
「おぅ」
笑う。
それから、ゆっくりと階段を降りてきて隣に並ぶ。
大きな手でわしわしと、少し背の低い黒い髪を撫でる。
「起きてたのか」
「イヤ…今起きた」
「そうか」
降り止まない雪は、相変わらず落ちては消えてゆく。
「なあゾロ。…かざはな…って何の事だ?」
さっき頭の上から降ってきたその言葉は、初めて聞く言葉。
「晴れた空から降る雪のことだ。風の花って書くんだと。」
「…風の花…」
頷いて、視線を空へと移す。つられて見れば、白いその姿が、空一杯に広がっている。
「風に揺れて、花びらみてェだろ?」
言われてみれば、そうかもしれないと思う。
柔らかな日射しに、溶けてしまうことしかできないその花びらは、それでもいいと思うのだろうか。
青い空の、その姿を見ることができれば、それだけでいいと。
「空が呼んだみてぇだな」
「…へ…?」
ぽつりと言ったその言葉に、思わず問い返す。
「…空が、白いその花に会いたかったんだ」
自分の青さの前では、長く存在していられないと知りながら。
「………………」
「ウソップ?」
「…逆…じゃねェ?」
「…?」
「…雪は青空に惹かれて、自分から降ってきたんだ」
溶けてしまうことを知りながら。
「…なら」
ニヤリと笑って、肩を引き寄せた。
「相思相愛ってヤツだな」
「え…ゾロ…」
「そうだろ?」
そうなのだろうか。雪は、空の青さに。空は、その白さに。互いに恋い焦がれ、思いを寄せるように存在するのなら。
寂しくはないと思う。
この空のように大きなその存在が、ちっぽけな自分を必要としてくれるのなら。
「…ゾロ…は、おれのこと…好き…?」
確かめるように聞く。
「なんだよ…急にどうした?」
何度でも言ってほしい、その言葉は。
「好きだ…ウソップ」
この雪のように儚く消えてしまうけど。
それも悪くないと思う。
そこに空があるかぎり、何度でも降り注ぐから。
やがて雪のように、心の中に降り積もる。
決して溶けることのない、想いに変わって。
END