ごちゃまぜ

□風邪ひいたのよ。
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亨が風邪を引いた。


「まじで?」
目の前に居る赤毛の少年に、そう言われて目を丸くする。
少年はこくんと頷くと自分を見上げた。

「理由は知らないんスけど昨日から調子悪ィみたいッス」
「昨日…?」

昨日は自分の大会があった日だ。
亨はいつも通り自分の応援にきていた。

「何か心当たりとか無いッスか?」
「んーむ…」

腕を組み首を傾げる。
思い当たる節を探ってみると、答えが出るまでにそう時間はかからなかった。

(あ、あれかも)

そういえば
自分を待っている間。
急に降ってきたどしゃぶりの中、彼女は傘も差さないで座っていた。
何事かと思って友人から傘を借り近寄ってみると。
ダンボールの中に仔犬が捨てられていたようで
そこらへんから拾ってきたダンボールや布で屋根を作ってやっていたようだ。
それでも耐えきれないようなので自分の傘を置いてやったらしい。
その後帰ろうとしたら仔犬がついて来てしまい
結局彼女の家で預かる事になった。
『びしょぬれになった意味ないじゃんか』
そう言って彼女は困ったように笑った。

(昨日涼しかったしな…体冷やしたんだろ)

ふむ、と一人納得すると少年は首を傾げた。

「なんとなく理由わかった気がする。今日家行ってみるわ」
「、はい」





ピンポーン

家の中にチャイムが鳴り響く。
家の前には見舞いを持った昴の姿。
インターホンから声が聞こえ 少しして扉が開いた。

「…どうも」

家から出てきたのは亨の双子の弟だった。
高校は違うが家に何回か遊びにきた時があるので知り合いではある。
ただ亨と違って無愛想なので付き合いずらい。
へら、と苦笑しつつ挨拶を交わし家にあがらせてもらう。

「、お」

足元を見ると昨日の仔犬が尻尾を振ってこちらを見上げていた。
洗ってもらったのかふかふかしている。
もこもこと自分の足にすり寄ってきてなんだかくすぐったい。
よしよしと撫でてやるとちぎれんばかりに尻尾を振った。

名残惜しみつつ亨の部屋へ向かう。
途中、弟君にもらった茶菓子セットを持ちながら。
軽く部屋の戸をノックする。
が、返事がない。
寝ているのかと思いそっと扉を開いた。






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