ごちゃまぜ

□常習犯
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「またお前か。」



その声は暗い、倉庫に響いた。
自分に絡みついてくる煙を軽く祓い眉をしかめる。

「校内禁煙のはずだが」

ずかずかと本人に近寄る。
彼は緩くタバコをふかし見上げた。
そして緩く笑む。
その行動にイラついて胸ぐらを掴み引き寄せる。

「聞こえないのか」

鋭く睨みつける。
だが彼からの返事はない。
変わりに口から緩く煙が吹き出され顔面を覆った。

「っ、」

いきなりの事でむせかえり手の力が緩んだ。
それを待っていたといわんばかりに彼は、相手の肩を掴み床に落とすように引っ張り倒す。

「っぐ、!」

体に衝撃が走りさらに噎せる。
そして気づいたら自分は、彼に覆われていた。
自分に影がかかり、暗い倉庫がさらに暗く感じる。

「…俺の事はほっとけよ」

彼がようやく口を開いた。
そして再び緩く笑む。

「嫌いなんだろ。」

ずい、と顔を覗き込む。
彼の瞳は碧くて、虚ろで、でも鋭くて。
何か言い返そうと口を開くが声が出ない。

「ナイショ、ね」

耳元で囁く。
息がかかり思わずぞくりと体が震えた。
そして条件反射に手を振り上げていた。

パン、と乾いた音が響く。

その直後、やっちまったという表情と共に赤く染まった頬の持ち主は緩く笑んだ。

「これでおあいこだ」

そう言うと彼は上から退き上着を手に取り倉庫からでて行った。
見送った後むくりと体を起こす。

「くそ…」

苛立ちと焦りと
よくわからない感情が入り混じり
軽く床を蹴った。

なんで
…なんで



「…やっぱ嫌いだ」

小さく吐かれた言葉は
暗闇に沈んで行った












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