ごちゃまぜ

□ダイゴ昔話。
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これは何年か前の話。







入学したての俺の目についたその人は
堅苦しい黒髪の中に混ざっていた
真っ赤に染まった髪の持ち主で
ふと目があった瞬間
緩く微笑んできた
その笑みはどこか暖かくて
自分にはとうてい出来ない笑い方で
そして久しぶりに優しい笑顔を見た気がした


そんな先輩に興味を持ち始めたばっかりの時
保健室で出会った。
けだるそうに頭をわしわしとかいて起き上がり
こちらに気づいたのかあのときと同じ笑みをうかべた



「君1年生だよね」
「はい」
「入学式にいたコ」
「はい」
「日本人じゃないよね。すげー目綺麗」
「…」


なんだか口説かれているような口調だ。
本人はそんな気がないのかあるのか
へらっと笑みを浮かべて首をかしげた。


「先輩は日本人ですよね」
「あー、うん。髪染めちゃったの」


小さく笑む
けど、さっきとはまた違う笑み
…だと、思った。


「1年生君は夢とかあるのかな?」
「夢、ですか。」
「うん。もしかしてもう将来決まっちゃってる系?」
「…まあ、そんな所です」
「そかそか」


ぽんぽんと頭を軽く撫でられた。
何故撫でられたのかよくわからなかったけど
悪い気はしなかった。


「先輩は何かあるんですか」
「んー。学校の保健のせんせー」
「…医者ですか?」
「まあ、そうだね」


はは、と笑う。
医者を目指してるように到底見えなくて
思わず眉をしかめる
それを見て先輩は「信じてないでしょ?」と苦笑してみせる。


「俺さ、ちょっと年離れた弟がいるんだよね」
「弟…」
「そ。病気もってんだけどさ。学校にいてもいつでも助けられるように保健のせんせーやろうって。そんだけ」
「…へえ」
「だからねーこう見えても頭いいのよー」


少し得意げに笑みを浮かべた先輩は
かわいい人だ、とふいに思った
瞬間首を緩く振り
何を考えているんだ、と
眉をしかめた


「君はよくここにしわつくるね」


言うと眉間に指を置いてきた
不意打ちにやられて少し驚く


「…しかめっつらなので」
「ふうん。笑わないの?」
「苦手です」
「そっかぁ」


指をどかし緩くえんだ
自分にはできない笑みを


「変な話して悪かったね」
「…いえ。楽しめました」
「そー?」


じゃあまた話そうか
そういって再び笑みを浮かべた
何故自分に好意を持って話してくれるのか
初対面で無愛想で
なんのおもしろみのない自分に
そう思っても
心の奥底で少々浮かれた自分に呆れた


「そだ。名前なんてーの?」
「、ユーリ。ユーリ・ミハイロヴィッチです」
「ユーリね。俺は梧泰胡」
「…アオギリダイゴ…」
「泰ちゃん先輩って呼んでくれていーよ」


いたずらに笑む。
いやですよ…と小さく言うと
ですよねーと笑んでかえってきた
やっぱりおもしろい人だ…


「んじゃ、俺はまた寝るから」
「、具合悪いんですか?」
「ちょっとだるいだけだよ」


そう言ってもそもそとベットへ入っていく
この人のだるい、の意味を知るのはそう遅くなかった。
だが。この時の俺は何の気もしないでその行動を眺めた。








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