ごちゃまぜ

□代替月鉄(前半)
1ページ/6ページ

いつの事だったろうか。
俺は一度先輩に助けられた。
そのときの背中は凄く逞しくて。
正義感に溢れていて。
俺は一瞬にして、先輩に引き込まれた。

俺は紛れもなく
先輩に惚れてしまったのだ。








いつもと同じように、学校へ登校する。
なんら変わらない風景。
また同じ1日が始まると、思っていた。

「…、」

遠目に見慣れた姿を見つける。
その人を見た瞬間、自分の心臓が早まるのがわかった。
そして足もそちらへ向かう。

「白雪先輩!」
「、月音か」

自分の声に反応して振り返り、自分の名前を呼んだ。
それだけでも嬉しくてさらに鼓動が早まる。

「い、いい天気ですね!」
「あぁ…そだな」

お決まりの台詞を言うと、先輩は青空を見上げた。
自分より遥かに高い身長で。
空を見上げているだけでも格好良くて。
思わず見惚れていたら先輩と目があった。

「どうした」
「ッいえ、綺麗だなって!」
「…可笑しなやつだ」

ふ、と薄く微笑まれた、気がした。
自分の妄想だったかもしれないけど、凄く優しい笑顔で。
自分の顔が一気に火照ったのがわかった。

「そういや…轟はどうした」
「、中葉は今日は休みみたいで」
「…風邪か?」
「いえ、家の用事がどうとかって」
「そうか…」

どこか安心した表情を見せる。
この人は本当に優しい人だ。
遠い後輩の事でも、体を心配してくれて。
そこがまた、格好良くて。

「おっはよおおおん!!」
「Σうわあ?!」

不意に後ろから抱きつかれる。
聞き覚えのある声と、テンション。

「吉田…っ」
「鉄先輩もおはよっす!」
「おはよう…朝から元気だない」

吉田の奇行を見ても引かずに眺めている。
そして俺は荒々しく吉田を振り払った。

「朝から抱きつくな!後お前、先輩の事…っ」
「ん?何?」
「て、鉄先輩、って…」
「あぁ、こないだちょっと話した時にね。ねっ先輩!」
「あぁ」
「話…っ?!」

いつの間にそんな、付き合いが古い方の俺だって、名前で呼んだ事なかったのに…!
悔しい、悔しい!
なんでこんな、しょうもないやつが!

「あ、もしかしてツッキーやきもち?」
「Σはっ?!」

内心を読まれたのか、びくりと肩を張る。

「もうっそんな心配しなくてもアニダはツッキーの親友だぞ★」
「……」

呆れた。
しょうもないものをみる目で吉田をみると、吉田も感じとったのか押し黙った。
 
「じゃ、じゃあ、僕は先教室行ってるよ!」
「…おう」

手を振られ一応振りかえした。
…先輩と吉田が仲良いなんてしらなかった。
自分は明らかに吉田に嫉妬している。
よくない、よくないぞ。

「音……月音、」
「ッはい!」

何回か呼ばれていたようで。
数回呼ばれてから気づいて先輩を見上げる。
と、同時に頭をぽんと撫でられた。

「…俺も教室行く」
「、あ、はい、」
「またな」

そう言って手を離された。
頭を撫でられた事に気持ちが舞い上がる。
さっきの事なんかどうでもよくなる程に。
自分に背を向けて歩き去ろうとしてる先輩を見て、思わず一歩踏み出した。

「っ先輩!」
「…、」

大きく叫ぶと、先輩は振り返った。
自分でも驚く位大きい声がでて、すこし焦る。
だがそれもお構いなしに喋り続けた。

「あ、あのっ」
「なんだい」
「きょ、今日、一緒に、帰りませんか…!!」

精一杯、話した。
先輩も一瞬驚いてみせるが、すぐいつもの表情に戻る。

「…ん、ええど」
「っへ、」
「授業終わったらそっち行く」
「…っありがとうございます!」

嬉しい。
先輩と一緒に帰れる。
そう思ったら凄く嬉しくて。
自然と笑顔になってしまう。

「じゃあな」
「っはい!」

再び別れを告げると、今度は大人しく見送る。
そして俺は、小さくガッツポーズをした。


今日はすごく、幸せな日だ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ