Short置き場

□シャープペンシルくんとボールペンちゃん
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きっかけはマスターの些細な一言で始まった。


シャープペンシルくんとボールペンちゃん


「あ。また、折れたや。最近、このシャーペンよく折れるなぁ……」

頭を掻きながら、溜息が洩れた。
こうも頻繁に芯が折れては一向に進まない。
机の上に積み上げられた課題の量を見て、もう一度重い息を吐く。

そこへ、ドンッ、と背中に衝撃が走った。
振り返ると、カラフルな服を着た少女が満面の笑顔で立っている。

「マスター、マスター。集中できないマスターにオススメがあるよ!」
「へぇ。どれどれ……?」
「私。この私、ボールペンを使ってよ」

一瞬、固まってしまった。
思考も体も。

あまりにも予想外で、言葉がすぐに浮かんでこない。

「――……一応聞くけど、なんで?」
「んーとね。ほら、私だったら、折れないし長く使えるじゃん」

得意そうに、彼女は胸を張る。

たしかに、ボールペンはペン先があまり折れる事がないうえに、シャープペンシルよりは長く使える。
だが、果たしてそれに彼が納得するだろうか……――。

ガタンッ、と大きな音をたてて、椅子が倒れた。
もちろん、何もない所で倒れたわけではない。
そこに座っていた彼に≪問題(ゲンイン)≫がある。

彼は物凄い形相で彼女を睨みながら、二人の元へ歩み寄った。
もちろん、彼女の方に体を向けて。

「おい。ふざけたコト言ってんじゃねぇぞっ!!」

金色の髪を振り乱しながら、彼は彼女の腕を思いっきり引っ張った。
その反動で、彼女は床に倒れ込んでしまう。

もちろん、彼から手が差し伸べられる事はなかった。

「痛っ。何するのよ! この暴力男!」
「何、じゃねぇだろ。お前、俺の事、マスターの前で散々貶しやがったくせに」
「なっ!? だからって、袖を引っ張らなくてもいいじゃない!」

彼女は勢いよく立ち上がると、鋭く彼を睨みつけた。
すると、彼も彼女を睨みかえし、二人の間に火花が散りだした。

「そもそも、原因はあんたなんだから。バキバキとしょっちゅう折れてたら、使いにくいわよ!!」

うっ……、と彼は言葉に詰まる。

言い返せない。
それはマスターの力が強いからだ、とは口が裂けようが裂けまいが、言えない。
その後、地獄を見る事は目に見えている。
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