SS置き場

□殺人記憶障害
1ページ/1ページ

目の前にあるモノは何だろう。

それに、周りの赤黒い液体は何だろう。

思い出そうとすると、頭が痛くなる。
目を閉じると、瞼の裏が赤い。


気持チ悪イ……――。


目の前の光景もそうだが、何よりも――わからない事が気持ち悪い。

とにかく、ボクは歩いてみた。

部屋の壁には、所々に赤黒い斑点がある。
何かが飛び散ったようなその跡の近くには、決まって形の歪なモノが落ちていた。

それを確かめようとすると、やはり頭に痛みが走る。


思い出したくても、思い出せない。

思い出してはいけないけれど、思い出したい。


相反する気持ちがボクの中で渦を巻いている。
気持ちの整理がつかない。

その時、足で何か蹴った。

きっと、形が歪なアレだろう。
しかし、やはり気になり、それを見てみる。


思考が停止した。

否、思考を停止させた。


考えなくない。
考えたくもない。


それが、父さんの頭だったなんて。


すると、その瞬間、鮮明にたくさんの事が頭に流れ込んできた。


真っ赤に染まった手。
解体していく家族の体。
たまたま鏡に映った姿は、まるで鬼のようなボク。


――そんな事、そんな事あるはすがない。

ボクが――ボクが最愛の家族を殺すはずが……。



「もしもし……。警察ですか?」





END
(2009.10.15)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ