Short-Short

□黒猫協奏曲
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 距離が近ければ近いほど、

 時間が長ければ長いほど、

 相手の価値は薄れていく。



 つい口走ったあの言葉。君にとってそんなに尖った物だったなんて、知らなかったんだよ。



【黒猫協奏曲】



 少しだけ開いた窓から吹いてくる冷たい風。ゆらりとそよぐカーテンの隙間からは、満月が見え隠れしている。

 都内の、小さなマンションの一室。

 テーブルに肘をつきながら、僕は淡々と機械的に夕飯を口に運んでいた。

 冷蔵庫にあった野菜で適当に作った炒め物、インスタントのスープ、朝に炊いた保温状態の白米。

 何を食べてんだかわからないような感覚のまま、それらは、あっという間になくなった。



 今の僕は変だ。

 料理とか、別に嫌いじゃないのに。

 昨日の夜出ていった「君」の作る下手な料理より、まだ美味しいはずなのに。



 この空間に足りない物は何?

 僕は、先程から僕の左足に顔を擦り付ける黒猫の頭を撫でてやった。

 お前も何か感じてるんだろうな、と小さく語り掛けてみる。





 君のいない部屋に、僕は何を思う?

 僕のいない日々に、君は何を見る?

 一日分の食器を洗い始めた僕の背に、猫がミャアと鳴いた。





end.

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