Short-Short

□Lovers...?
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『お前、ちっちゃいよなぁ』

 私の頭をポンと叩く手。

『遅い。……ったく、ほら』

 差し出される優しい手。



【Lovers...?】



 紺地に淡い桜の柄が浮かんだ浴衣をいそいそと着込み、私は近所の神社へ向かった。

 地元でも有名な、結構大きな夏祭り。途中、私と同じように浴衣を着たお姉さん達も何人か見かけた。

 車道は渋滞気味らしかったが、私は気が急いて早足になった為か予定より早く着いた。彼のことだ、まだ来ていないだろう――と辺りを見回すと、鳥居に寄り掛かっている人物を視界に捉えた。

「亜規(あき)、もう来てたの?」

「とっくだよ」

 無愛想に返す亜規は、紺色のTシャツにジーンズという普段通りの格好だった。だが。

「あ、下駄だ」

 私が指を差していうと、亜規は何とも表現し難い表情をして目をそらした。地味に夏祭りの雰囲気に合わせてみたことを気付かれて恥ずかしいのだろう。亜規はそういう人だ。

「ねえねえ、浴衣どう?」

 私は両腕を開いて中途半端に持ち上げたポーズで聞いた。

「まあ似合うんじゃない」

 投げやりなトーンだが、亜規の口から出た割にはなかなかの評価な方だ。嬉しくてニコッと笑い掛けると、亜規も息を吐くように笑った。

「じゃあ行くか」

 私は、出店の集まる通りへと歩き出した亜規の後に続いた。



 ……背の低い私は、人混みの中に埋もれ掛けていた。

 背の高い亜規を見上げ必死で後ろについて行く。はぐれたら大変だ。私は携帯電話を持っているが、亜規は持っていない。いくら連絡に便利な携帯電話といえど、相手が持っていなければ何ら意味がない。

 私は手を伸ばして亜規のTシャツの裾を握った。こうしていれば多分大丈夫。

 不意に亜規が振り向いた。

「はぐれるなよ。ちっこいから探せなくなる」

「わかってる、けど」

 私が亜規の服の裾をぎゅっと握っていることに気付いた亜規は、小さく溜息をついて左手を差し出した。

「仕方ないな。ほら」

「うん、ありがとう」

 控えめに手を繋いで、私達は出店の並ぶ道を歩いた。



 いつか亜規に私以上に大切な人が出来ても、ずっとこのまま並んで歩けていたらいいのに、――なんて、流石に無理な願いなのかも知れないけれど。



 他人が見たら恋人同然?

 そんな私達の関係は、きっと今も先も変わらない、『ただの幼馴染み』。





end.

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