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□ピーマン
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小十郎が畑の真ん中で座り込んで頭を抱えている。
「うーん」
「Hey、どうした小十郎」
「このピーマンはなぜ大きくならないんだ」
「Ah? ピーマン?」
「えぇ、ピーマンは非常に栄養の豊富な野菜なのですが、今年はなぜか育ちが悪いのです」
政宗は頭をポリポリと掻いて欠伸を一つした。
「別にいいじゃねぇか。ピーマンくらい」
小十郎はおもむろに立ち上がり、政宗の両肩を掴んだ。
「いいえ、政宗様が一層強さと美しさを保つための大切な要素なのです」
「お前なあ、男の俺が美しさを極めてどうすんだよ。ま、俺より勝る奴はいないと思うけどな」
政宗は少し顎を上向きにしてポーズをとった。
「だが、ピーマンは食べないぜ」
「またそのような好き嫌いを……、今日の夕食はピーマン攻めにしますよ」
「ふん、そんなんだったら夕飯は食わねぇよ」
「政宗様!」
「ふん!」
「では、政宗様が食べるまで三食すべてピーマン料理にしますよ」
「う……」
さすがに今の言葉は効いたらしい。
「さ、わかりましたら、一口いかがです?」
「いやだぁ〜〜!」
畑で政宗の口にピーマンを押し込もうとする小十郎と、なんとかピーマンから逃れようとする政宗の取っ組み合いがしばらく続いた。
どちらが最終的に勝ったかはその日の夕飯で明らかになる。
「うぇ……」
「しっかり食べてくださいね」
終