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□あったかいね
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放課後、委員会を終えた千鶴は教室に忘れ物を取りに行くと


夕日に染まった茜色の教室で一人窓際の席で眠りこんでいる沖田の姿が視界に入った

(いつも気持ち良さそうに寝てるなぁ…)

授業中、隣で沖田の寝顔を見るのが千鶴の日課のようになっている
そして毎度寝ている沖田を苛立ちながら必死に起こそうとする土方先生を宥めるも日課のようなものだ

土方先生に起こされる度に「だって僕、日向ぼっこ好きなんで、つい寝ちゃうんですよ」
と寝起きなのにも関わらず嫌みな程に清々しい表情で答える

ふふっと思い出し笑いをしながら沖田の前の席に座る
沖田の席に肘をついて赤子を見守る母のように沖田を眺める

「…昔も今も日向ぼっこ、お好きなんですね…」
誰にも聞こえない、か細い声で囁いた




「………ん…ん…?…千鶴ちゃん?」

「…!わっ、…はいそうですよ」

「…人の寝顔を盗み見するなんて、いい度胸だね、君、苛めるよ?」

「……あ…」


(君、殺すよ?)


そんな沖田の言葉に炎が投げ込まれたかのように目頭が熱くなる
「……はい…」

沖田の予想とは違う千鶴の反応に少し面白くなさそうに
「意外な反応だね…」

「…言われ慣れましたから」

千鶴がそう言えば、沖田は言われ慣れるって凄いねと、からかうように笑う


「ふわぁ…まだ眠い……そうだ千鶴ちゃんも一緒に寝よ?僕の寝顔見たんだからそれぐらい良いでしょ?」

あくびをする沖田を愛しそうに眺め、

「…はい、良いですよ」


そう答えて沖田と千鶴は向かい合わせで一つの机を挟むように寝る


「…なんか千鶴ちゃんって懐かしい香りがする…」

「え…?」

ふいかけられた沖田の言葉に閉じていた瞳を開けると思っていたより距離が近く、千鶴の心臓はドキっと跳ねる


「なんか日向ぼっこの太陽の香りじゃないん…だけ…ど………」


そこまで言うと沖田は、すうすうと寝息をたて、眠りにつく


(また先に寝ちゃうんだから…)

そんな沖田を潤んだ瞳で見据えながら微笑んで



「…ええ、私も懐かしいです…」




あったかいね
(懐かしい温もりに触れて夢の中で懐かしい光景をみた)





*******

ふたりで同じ夢を見てたらいいなぁ

転生前の記憶なし沖田と転生前の記憶あり千鶴


 

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