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□桜に溺れても見つけられる
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「総司さん…何処に隠れたんだろう…?」

暖かい春風が青々しい草木の間を吹く中で千鶴は総司を探す為、足を前へ進める


そもそもことの始まりは総司が「久し振りに、かくれんぼしよっか」との一言からだった



(総司さんって昔から上手に隠れるから、いつも見つからなかったなあ…)

屯所時代のことを思い出し、思い出に浸りながら、ふふっと思わず笑みが溢れる

そんなことを思いながら辺りを見回していると視界に臼桃色を纏った大きな大きな桜の気が遠くに見えた

(……あそこ…な気がする)


深く強く咲く桜に無意識のうちに心引かれ歩き出す



じゃり、と少し湿った砂利道を歩き抜けると一本の立派な桜が視界に飛び込んできた
綺麗や、そんな単純な言葉では表せないほどの桜を目の前に千鶴は、その姿にただ見惚れる限り
するとその桜の木の下で見慣れた着物の色が見えた

(あ…)

桜の花弁が布団のように寝転がっている総司を覆い包む

総司さん見っけ、と心の中で囁き、目を瞑っている総司の顔を覗き込む

(いつ見ても綺麗な寝顔、本当飽きないなあ…)

愛しい貴方の寝顔は、どんなに見ても愛しい限りです。そう心に言い、まじまじと見つめていると、ぱっと総司の目が開き「千鶴のえっち」と面白がるような声に反論しようとした矢先、勢いよく腕が引っ張られるのと同時に桜の花弁がぶわっと舞い、ひらひらと新雪のように柔らかく落ち、千鶴は総司の胸に引き寄せられた

目を瞬かせていると、くくくっ、と笑い声が千鶴の耳を伝い「狸寝入りしてたんですか!」っと耳を真っ赤にする

「ごめん、ごめん。今度は僕が鬼になるから許して?」

「…許さないです」
ぎゅっと総司の袖を掴み「私を一人にする総司さんは許しません、ずっと、こうしていたい、です…」

そう言えば総司の手をぎゅっと握り顔を隠すかのように総司にすがりつき顔を沈める

「…うん、ずっとこうしていたいから許さないで」



それは繋いだ手を強く強く握りしめた春の日のこと



桜に溺れても見つけられる

(どこへいってもみつけてね)
(みしらぬかみさまにたった一つのおねがいおねがい)



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ED後、ふたりでかくれんぼなんかして過ごして、その度に傍にいれる喜びを分かち合えてたら良いなぁ


 

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