ブック

□幾千かくれんぼ
1ページ/1ページ



「もういいかい?」

そう問いかけても返ってくる言葉は無い日常の中で人が行き交う駅、学校のつまらない授業中、人混み、心の中でも何度も呟いた

探すは脳の心髄にある記憶の彼女
日向ぼっこをしている時は漆黒の髪が透き通って多彩な色をもち、お日様みたいな笑顔と香りで僕を包んでくれた空みたいな彼女


『空って千鶴みたい、だから僕は雲ね』
『総司さんの方が空みたいです』
『空が辛い時は雲が支えて雲が辛い時は晴天で飛ばしてあげる』
『はい』

何度も何度も探す
「晴天ばっかりじゃ、いられないよ」

何度も何度も問う
「何処にいるの?」

やっぱり問いかけても返ってくる言葉は無くて人の笑い声や雑音が耳に入るだけ
すれ違う女の子の姿を追っても彼女は居ない

ここかな?あそこかな?
何処に居るの千鶴
何処に隠れてるの千鶴
見つけた、って前みたいにギュって抱かせてよ千鶴
すぐ見つかっちゃいました、って困ったように笑ってみせてよ千鶴
鬼役も疲れちゃった千鶴



千鶴


ちづる


「さすがの僕でも存在が不確かな君の隠れ先なんて見つけられないよ」


 ぼ
(もーういいかい)






******
沖千夫婦→転生総司



 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ