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□それは果たして報われる為に
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それは嵐のように前置きも無く、

「え?」
「聞こえなかった?だからもう金輪際僕の看病はしなくて良いって言ったんだよ」

御盆に昼食と薬を乗せていつもの様に沖田の寝室へと運ぶと沖田は千鶴が入ってくると陶器で作られた人形の瞳のように、じっ、と千鶴を見るなり顔を背ける
千鶴は沖田の普段とは違う雰囲気に気になりながらも、いつものように世間話をしようと口を開こうと思えば沖田から放たれた拒絶の言葉

「…」
「…そん、な、」
どうして、と言おうとしても喉の奥が震えて上手く声が出せない
「…君も分かってるかも知れないけど僕は、もう長くも無いし、こんな体じゃ何も出来ない」
物事を冷静に淡々と話す彼は操られているかのようにとても機械的で

「わたしは…っそんな利益や打算なんて考えていません…!貴方を深くお慕いしてます、……貴方が…沖田さんが好き、だから、ただ傍に居たいだけです」
熱く潤む瞳は充血して少し赤く魅惑を匂わせる
「…人間ってさ好きなら好きって言うくせに嫌いになったら嫌いとは言えないよね。無駄だよ、君が僕に好意を持ったって長くも無いし君が泣くだけだ」
「…っ!それでも…っわたしは…!」

「千鶴」

障子の開く音が千鶴の背に響き、後ろを振り向こうとする前にグイッと腕を引っ張られ立ち上がる
突然のことに驚き入ることながら後ろに目をやれば、
「…土方さん」

憤怒の形相を浮かべ呆れたような諦観混じりな声で、馬鹿はほっとけ、と一言投げ捨て千鶴の手を引っ張り寝室を出る

「あの…土方さ……、?」
先程の何時にもなく土方の表情に少し戸惑い、恐る恐る声をかけたら急に二、三歩後ろを歩いていた千鶴の方に振り向き片手で千鶴の頭を自分の胸に抱き寄せる
「っ土方さ」
「…すまねぇ…ちょうど総司の部屋の前を通りかかった時に会話を聞いちまった…総司の言ったことは、気にすんな」
そう言って頭を優しく撫でてくれる手に違和感を感じて胸が締め付けられる

「違う…んで、す、別に利益とか、報われたいから沖田さんを、好きになったんじゃありません、別れを知る為に好きになったわけでも無いんです」
ぎゅっ、と土方の服の布を握る

「ああ…分かっているさ…」
そう言って抱き締める土方の腕に力が入る

「…すみませ、ん」
「泣くな…謝るな、お前は悪くねえよ」
「すみませ、ん」
謝罪の言葉を紡ぐ彼女の瞳から沢山の感情が頬を伝い、流れ落ち、じわり、と床に染みる痕跡

(それでも私は沖田さんが好きなんです)






撫でられて感じ違和感の
答えは簡単った
いつもの子供を
やすような手じゃない
いつもの細くて
力強い腕じゃ
わたしの智慧の果ては、あまりにも子供じみ屁理屈ばかりで、
ああけれどあの人どうしようもなくしく想う気持ちに理屈も屁理屈も無いので




*****
沖→←千←土
企画「想い願う」様に提出させて戴きました



 

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