夢の中へのノクターン
□君に降る雨に
1ページ/1ページ
「雨…やみそうにないですね」
「そうだね」
久しぶりに千鶴と二人で団子屋に来て他愛もないことを話して、
その団子は美味しい?
と聞きながら僕は千鶴の食べかけの団子を食べたら千鶴が真っ赤になって
仕返しです
と言って僕の団子の食べかけを食べられて僕は思わず照れてしまったり
そんな時間を過ごしていたら、ぽつぽつと音をたて
何だろう
と思えば地面に染みをつくり雨が降っていたのだ
だから今こうして千鶴と二人、雨宿りをしているわけで
(この時期、雨って絶対降るなぁ…)
やみそうにない降る雨に少し憂鬱さを感じる
でも隣には湿気で少し髪がふわっとしていて気にしているのか何度も髪を小さな手で整えているので、そんな彼女も可愛いなと感じたり
(早く帰って千鶴と一緒にお風呂入ろ、)
そう考えたら雨も悪くないな、と感じて、やっぱり千鶴といると違う世界が見えて新鮮だ
そんなことを胸に秘めながら降り続く雨を見ていると、ふと雨は儚いなぁ、と思った
ぽたぽた沢山の雨のしずくが幾度とも落ちてまた違うしずくが落ちてくる
どれが早く地面に還ったのか分からないほど一瞬で人間に似ている
そう感じたのに親近感や可哀想とは思わず羨ましく思えた
僕が雨自身に生まれ変われたなら君が生きてる間も触れられるのかな
この世と未だ見知らぬあの世の間にいれる気がして
例え君が空に還っても
僕が雨なら近くにいられるんじゃないか
とか
無理矢理理屈を合わせたくなる
まだ一緒にいたい、
終わりが分からないから怖いのだ
誰にだって終わりはくるし、いつかなんて分からない
誰にでも平等なはずなのに
少し死期が近いという危機感に迫られると不安になるなんて
それなら知りたくなかった、なんて思うのだけど
(やっぱり死への覚悟をしておきたいなんて、あの時代の戦を戦っていた新選組一番隊組長沖田総司の名が廃るなぁ)
生きることに依存しているというより君に依存しているから
そんなことを考えていたら
(ん?)
ふと繋がれていた左手に強い力を感じ彼女を見ると自分の心情に気付いたのか優しく微笑む千鶴がいて
ふわっとした彼女の髪をわしゃわしゃっとすると
「子供扱いしないで下さい」
という彼女
「あのね、千鶴」
「はい、総司さん」
君に降る雨になりたいんだ
(ただ降る雨じゃ君に会えないかも知れないでしょ?)
(「なら私は貴方を受けとめる地面になりたい」と彼女は僕の無理な願いを支えた)
fin
2010,6,13