夢の中へのノクターン

□二人三脚
1ページ/2ページ



「1、2、1…っきゃ…!」

「うわっ!!」




お互いの足が縺れて勢いよく乾いた土に転ぶ





「…いってぇ…大丈夫か?千鶴」

同じように隣に転び倒れた平助が心配そうに問う



「…うん大丈夫…平助君こそ大丈夫?」


千鶴は気遣うように手足にジンジンとくる痛みを覚えながらも微笑み身体を起こす




(……痛た…)


既に傷がある身体で乾いた土の上に転ぶのは、やはり痛みが伴う


(二人三脚って簡単そうに見えて難しいなぁ…でも!明日は体育祭だし練習しなきゃ!)


そんな思いを持ち自分自身で気合いを入れ直す千鶴


「あ…紐ほどけちゃったね結び直さなきゃ!」





そう言って紐に手を伸ばし、土まみれの靴を払い結び直そうとした






「あれ、千鶴ちゃん達、まだ練習してたの?」


背後から聞こえてきた声に手が止まり後ろに振り向く




「…沖田先輩!」



そんな千鶴を見るなり沖田は

「というより全身傷だらけじゃない、女の子なんだから気にしないと…」



そう言って千鶴の両脇を抱えて立ち上がらせ、くしゃっと頭を撫で、顔に付いている土を指で払う



触れられて少しドキッとする千鶴


「あ、」


「?どうしたんですか?」



何か悪知恵を得た子供のような表情をする沖田に千鶴は先程の不意にもドキッとしたことがバレたのかと焦る







「僕も二人三脚したいな!」


「…………え?」




千鶴は首を横に傾げポカーンとして、沖田と二人三脚をしている自分を想像した



(…いやいや駄目!恥ずかしすぎる!無理だ!)


「いやいや無理だろ!第一総司、制服じゃんか!」



その言葉に千鶴は少しホッとしたような残念なような気持ちになる




「いや大丈夫だよ、女の子みたいにスカートじゃないんだから。別に汚れても構わないしね」


そう言ってセーターを脱ぎカッターシャツの袖を捲る沖田



そして千鶴の元に足を踏み出し互いの足を紐で結びだす




「ええぇぇ!ホントにするんですか!?私、土まみれだし汗かいてるし汚いですよ…っ!」

慌てて自分を謙遜する千鶴に沖田は、そんなことないよ、と言い、千鶴の肩を抱く



「ほら千鶴ちゃんも僕の肩抱いて」


「はははい!失礼します!!」


「ははは、やっぱり面白いね千鶴ちゃん」



 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ