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□私を呼んで!
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「おい、嫁」



彼が私を呼ぶときは「嫁」だとか「おまえ」だとか、いつもそんな言葉で






(なんか、なぁ…)


前々から気にしていた千鶴は少し前を歩く彼の裾を掴んで立ち止まる



風間はクイッと引かれ立ち止まり後ろを向く


「どうし「……風間さん、私の名前ご存知ですか?」



「ああ、当たり前だろう」



その当たり前の答えに千鶴は内心ホッとしながらもムッとした表情で風間を問う




「……ならその嫁、とか、おまえ、とかじゃなくても良いんじゃないですか?」




その千鶴の言葉に風間は微笑を浮かべ

「ほう、名前で呼んで欲しい、と言うことか」




「…なっ!!」


千鶴は頬を染め、俯き凝らした声で違います、と精一杯の反撃をする



「ならこの話は終わりだな」


そう言って前を向き、また歩き出す







ああ、悔しい、


いつも私ばかり振り回されて


彼から近寄ってくるくせに私から近寄れば素っ気なくて


自分勝手で狡い






千鶴は目の前の人物を追いかけて、すがりつき自分の顔を彼の背中につける




「…な…「…"私"を呼んでください」






「…さすが我が嫁だな、なかなかやるな」



「なんたって貴方の嫁ですからね?」




風間はフッと笑い、悪くないだろうと呟き、声をかける



「……行くぞ、……千鶴」




「はい!」




(…名前を呼ぶのは結構緊張するのだな…)


私を呼んで!

(私だけの名前だから貴方に呼ばれたい)




(なら千鶴も我が名を呼んでもらおうか)


(……それは、もうちょっと御預けです)


(な、それは狡いではないか!)


(冗談ですよ、…千景さん)


(………あぁ、それで良い(…名前で呼びあうのも中々良いな))




fin



*********

最初のネタから随分と変わってしまった…
まともな、ちー様は難しいです



 

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