ミジカメ

□Soup-side.R-
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秋の空は高くて、ここが宇宙船の中だって事を忘れてしまう。
私の好きな人は、この空よりもっと高くまで、飛ぶの。

思いが通じたばかりで、どうすればいいか、何をしたらいいか分からない。
一緒にいたい。
それは分かっているのに。

少し肌寒くて、制服のカーディガンの袖を手の甲までかぶせたら、彼が手をそっと取った。

グリフィスパークから見る夕日は、いつも切ない。
それは、今日のお別れが近づいている合図だから。

何も言えない。
何も言わない。

空気を震わせると、この時間が終わってしまう気がする。

夕日は、どんどん色を濃くして、地上にキスしようと降りてくる。
天井に映し出されたCGなのに、どうしてこんなに感傷的になるの?

「ランカ」

橙に染まった彼の綺麗な形を見つめると、少し困ったように「えぇと」なんて言った。
思わずくすぐったくて、「ふふ」と笑いかけると、彼は慌てて「呼んでみただけ」と夕日を見た。

告白が受け入れられて、恋人同士になって。
大慌てで雑誌やテレビで情報を集めた。
恋人同士って、どうすればいいか分からなかったから。

3回目のデートでキスをして。
3か月目で体の関係を持つのが普通。
でも、ピンと来なかった。

だって、会える時間は、一緒に居るだけで満たされてしまって、何も望むものが無いんだもの。

キスなら、映画のお芝居で、図らずも、した事がある。
恋人同士になってからのキスは実はまだだったりするけど、したくなったらすればいいと思う。
きっと、そのタイミングは自然に来ると思う。

アルトくんと一緒に居たい。
一緒に居ると安心できるの。

アルトくんは戦闘機に乗っているから、どれくらいの時間を寄り添って過ごせるか分からないから。
バルキリーが飛び立つと、無事に帰って来てといつもお祈りしながら、歌う。
私は歌うしか能が無いから。
でも、その歌だけは届くと思ってる。

「ランカ」

もう夕日は半分落ちて、反対側の空はアルトくんの綺麗な髪のいろ。
天井の絵の具、橙と藍が溶けるすきまの真下に、私たちはいる。
アルトくんを見上げたら、その綺麗な顔が降りてきた。

あ、さっき、夕日が地上にキスをするみたいだって
思ってたけど
もしかしてこんな予感があったから?

頬に触れた、繋いでいない方のアルトくんの指は冷たくなっていて
私はさっきのお返しに、カーディガンで温かくなっている、私の掌で包んだ。
そっと触れた唇は柔らかくて温かかった。
こっそり薄眼を開けたら、長い睫毛が目の前にあって、心臓がとび跳ねた。
触れた時とおなじように、そっと離れていくアルトくんの唇が
やっとできた なんて言って吐息を吐いた。

急に恥ずかしさが込み上げてきて、帰ろう と照れた顔で笑いかけるアルトくんをまともに見られなかった。

最近覚えた、昔の甘い恋の歌が浮かんで、最後の部分を口ずさんだ。

―最後の時がいつか来るならば
それまでずっと キミを守りたい―

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ランカみたいな恋には綿菓子ちゃんには、ゆっくりペースでいってほしい!
インスパイア元はPer○umeの「マカロニ」です(*゜ー゜)

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