SAお題小説

□3人の思い出
3ページ/6ページ









―――この世界なんてどうでもいい。なくなってしまえばいいのよ。




朝、学校に来る。靴箱には靴紐を切られた上履きと、『死ね』と書かれた紙が入っていた。
上履きは新しいのを履き、紙は隣の靴箱に突っ込んだ。


教室に入る。誰もいない。机の上には、私への悪口が書かれた寄せ書きと花瓶が置いてあった。
とりあえず捨てておいた。


ロッカーをあける。破られた教科書が出てきた。
中は読める。


クラスメイトが次々と教室に入ってくる。私を見るなり、舌打ち、または笑ってくる。

朝のHRが始まる前にはほぼ全員が登校してくる。


そして、始まる。


「ちょっとぉ?【 】さん?講演会の出欠票は持ってきたの?出してないの貴方だけよ?」


突然、学級委員長が話しかけてきた。

私は"当然"、その配布物のことを知らない。


「…なんですか、それは?」


…どうせ"また"、私のだけ配布してないのでしょう。


「はぁ…忘れたなら忘れたって素直に言えばいいじゃない。」


…毎日のようにやって、飽きないのかしら?


「もうボケ始めてるんじゃないのぉ?」


「もう、ババアだもんな。」


「白髪染め買ったらぁ?」


「「「アハハハハハハハハッ!!!!」」」


クラス中が私を笑う。
他人と違って、私の髪は、他人と違って白い。だから、こういうものの対象になるのだろう。


「早く死んじゃえば?」


「楽になれるよー?」


「おいおい、今ここで死なれたら呪われるぜ?」


「やだー。」

「こっわーい。」


必要とされていないのなら、死にたい。死んでも、この人達なんか、呪う価値もないわ。




そのときだった。"いつもならいない2人"が教室に入って来た。


「バス増便Yahoo!!」


そう言って、1人の女子が教室に入ってきた。
私を含め全員がその声に反応して、教室の入り口を見る。


「これで遅刻ギリギリとかはしなくて済むね。」


その後ろにもう1人女子がいた。

そして最初に入ってきた人は私の方を見て、


「……………。」


黙った。

そしてもう1人は、


「…………うわ。」


そう、小さく言った。

どうせ、私のことでしょう?


「飛菜、聞いてよ!【 】が、期限が今日までの提出物を忘れたのよ!」


さっき、私に話しかけてきた学級委員長が、最初に入ってきた人――飛菜さんに言い訳をした。


そして飛菜さんは、


「あ、私も忘れた。」


そう言った。


「……は?」


学級委員長が間抜けな顔で言った。

本当、間抜け…。


「あーあ、飛菜何やってんのー。私みたいにさっさと出せばいいのに。」


「うるさいっ、妃遥は出すのが早いんだよっ!」


あとから入ってきた人――妃遥さんは、提出物を配布された翌日に出す人だ。

さらに妃遥さんは常に学年トップで、異性からは好意を抱かれているらしい。少なくとも、このクラスにも好意を抱いてるのは何人かいる。


そして、そんな妃遥さんはこう言った。


「これで提出物出してないの、2人だね!」


学級委員長の顔が青ざめていく。
もしかしてさっきのを聞いていたのかしら?


「おい、ヤバくねぇか?」


男子が委員長に小さい声で話しかけた。

それを、彼女達は聞き逃さなかった。


「「何が?」」


「あ、いや、その…。」


何も言えなくなった男子。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ