SAお題小説

□3人の思い出
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「ほら、妃遥!挨拶しなさい!」


3歳だっけ、飛菜と初めて会ったの。

親同士が親友だから、私達は出会えたんだ。


「…は、はじめまして。」


母の足にしがみついて、飛菜のことを見てたなぁ。


「ごめんね〜。この子、恥ずかしがりやなの。」


あのときなんであんなに恥ずかしがりやだったんだろう…。


「ひようちゃん?あたし、ひなっていうの!よろしくね♪」


飛菜は私と違って、明るかった。


「よっ…よろしく…。」


「?」


「ごめんね、飛菜ちゃん。この子、本当に恥ずかしがりやで…………。」


「…そーだ!」


あのときの飛菜は何を考えたのか、人差し指を私に向けた。


「ぴーりかぴりららぽぽりろぺーぺるとぉー!スクみずまじょk―――じゃなくてー、あたしとひようちゃんが、なかよしになーれ!……………ほら、これでなかよし!」


「………ふふっ。」


飛菜のその性格がうらやましかった。

でも、あのとき3歳児が言う言葉ではない言葉を――――まあ、いっか。




それから飛菜とは幼稚園から中学まで一緒で―――――









「妃遥なんか死んじゃえ!消えて!」


「じゃあ飛菜が消えたらどう?この前死にたいって言ってたよね?どうせなら、中身ぶちまけて死んで。」


小学6年生のとき、妃遥とケンカした。理由は覚えてない。でも、ケンカしたことは事実。あの言葉を言ったときの妃遥の顔が怖くて、あたしは泣いた。




市立の中学入って、妃遥と同じクラスになった。しばらくはお互い、話さえしなかった。


でも、毎日何かが足りなくて…。


本当は、妃遥に話しかけたかった。

でも話すことがないし、またあんなこと言われたら…。




あたしはまず話題を探した。必死に探した。部屋がちらかったけど、まあいっか。


そして見つけた。今思うと、なんで『物』を探したんだろう、あたし。話題なら脳と相談しなきゃ。




話題は見つかった。あとは、話しかけるだけ…!

妃遥の近くまで行って、


「ひ………」


ここまできたんだから言わなきゃ、言わなきゃダメよ、飛菜!


「……………っ、妃遥!」


妃遥は驚いた顔してこっちを見た。

あとは話題、必死に探した話題を振るだけ…!


「えっとね、えっとぉ…………しょっ、小3のときに借りてた三角定規、まだ返してなかったから今返すね!」


言えた。…かんだけど。
でもまた、あのときのケンカみたいにボロクソ言われたらどうしよう、そう思った。


でも妃遥は笑って、


「え、ちょっ…今更!?もう存在忘れて新しいの買ったよ!」


って言った。ホッとした。いつもの妃遥だった。

…やっぱり、今更だよね。


「あー、もうあげるあげる。2代目いるからいらない。ほら、誕生日プレゼントだよ。」


「誕生日プレゼントかよっ!!嬉しくねーっ!!」


とりあえず、ここで仲直りした感じになった。




そのあとはケンカすることはなかった。不満はあったけど、それを笑いながら言い合えた。




あれから、1年経ったときだったかな―――――
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