小品集

□「深い意味なんてない偶然だからっ」
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2月14日
女の子にとっては勝負の日、バレンタインデー。
…の三日前、とあるカフェでの女子トーク。



「千鶴ちゃんはやっぱり彼氏さんにあげるんでしょ?」

「え、!?…えーっと…、」


この様子だとやっぱり彼氏にあげるのかなあ。
いいわね、千鶴ちゃんに想われる相手は幸せで。
私は独り者だから、千鶴ちゃんの惚気話聞くのが楽しいと同時に寂しくもある。


「お千ちゃんは?誰かにあげるの?」

「お菊にいつもありがとう、っていう気持ちを込めて…」


飲んでたコーラの氷をつつきながら誰に作るか考えてみる。
…やっぱり、お菊だけかしら。


「………風間さんには?」

「な、なんであんな奴に!?」


不意にに千鶴ちゃんに告げられた言葉。
なぜ風間の名前!?
(あの変態に…!)


「なんだかんだで結構仲いいし…、私はお似合いだと思うんだけど」

「だれがあんな奴なんかに!」





……と言ったものの。




「なんでこんな場所にいるのよっ…!」


生徒会室の前、つまり風間が一番現れる可能性が高い場所。


「千鶴ちゃんが…あんな事言うから…」


…気になった、じゃない。
あいつが、他の女の子からチョコをもらわなかったか、って。
(本当…なんで…)



「どうして八瀬の姫が此処にいる?」

「なんでって…風間に用があるのよ」

「俺に、だと?」

「………ええっ、風間!?」



いつの間にか目の前にいる風間。
な、なんでこんなベタなのよ!?


「それでなんだ、俺は忙しいんだが」

「あ、あんた、今日はなんの日かわかってる!?」

「知らん」

「……深い意味なんてない、私が此処にいたのは偶然だったからっ!」


風間の顔面に向かってチョコの入った袋を投げつける。
そして風間の顔を見ずに廊下を走った。
(顔、暑い…!)




馬鹿、馬鹿、馬鹿。
でもチョコをあげたのは…


あいつがちょっと、気になったから

(くくっ…なかなか面白いものが見れたぞ天霧)


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