小品集
□「べ、べつにそんなこと気にしてなんかいないし」
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いつもの教室、いつもの風景。
でもいつもと違う特別な日。
「藤堂くーん!!」
「ん?」
「チョコあげる!!」
「おー、さんきゅ」
朝から朝からこんな事の繰り返し。
バレンタインだからって女子みんな張り切りすぎだろー…
(いや、チョコ貰うのが嫌だとかじゃなく)
だって、俺は…
「なーに、平助。君、千鶴ちゃんが誰にチョコあげたのかとか気になってるでしょ?」
「うおうわ、って総司!?…ったくなんだよー。驚かすなって。」
「別に驚かせたつもりはないんだけどね」
急に俺の後ろから総司が声かけてきた。
…総司がこんなニヤ、って笑ってるのって嫌な予感しかしねーんだけど。
なんでこんな笑ってるんだよ…。
「ホラ、これ。」
「あ?なんだよそれ。チョコじゃん」
総司はこの中身でも外見が外見なので女子からの人気も高い。
だからバレンタインの今日女子からチョコ貰うなんて普通じゃね…?
「僕が普通の女の子達からチョコ貰うと思う?興味ない女の子から好意もらっても邪魔なだけだし。そんな好意もらっても邪魔だから僕に好意もったら殺すよ、って言ってたじゃない。」
「お前ほんと物騒だよなー…ってまさか!!」
「そ、これ千鶴ちゃんがくれたチョコ。」
総司が千鶴に興味があるのは知ってた。
でもだからって総司にチョコ渡して俺にくれてないなんて…!
(千鶴の馬鹿…!)
「おい、平助」
その時聞こえた静かだけど強い声。
(一君…?)
「あんたに客人だ」
一君の後ろに顔を赤らめた女の子がいた。
(は…?)
「凄いね平助、モテモテじゃん」
「………」
総司を無視してとりあえず女の子に近づく。
確か隣のクラスの子だっけ…?
「なに?」
「あ、その…。場所移してもいいですか…?」
「いいけど…、!」
教室から出てふと顔をあげるとそこには千鶴がいた。
(あ…!)
でも俺と目があったらバツが悪そうな顔して後ろのドアから教室に入ってしまった。
「…藤堂くん…?」
「あ、わりぃ…」
とりあえず人がいない場所へ移った。
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