S.SHORT

□この日常が。
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「あら、十四朗さん。また縁側にいらっしゃるんですか?」


道場での稽古が終わった後の夕暮れ。
そーちゃんのお師匠様である近藤さんと、この間、新しく道場に入ってきた十四朗さんはそーちゃんに連れられて、よく家に遊びに来ます。
そして、十四朗さんはよく縁側に座って庭を見ています。


「そーちゃんと…、近藤さんは?」


「隣の部屋で寝てる」


「あらあら。疲れたのかしら」


部屋を覗いて見ると、仲良く寝転んで寝ている二人の姿。

なにかかけてあげようかしら、と思ったらもうかけてあって。
…このぶっきらぼうな人がかけたのかな、
と思うと思わず笑ってしまう。


「…隣、いいですか?」


「………。」


この人が無言なのは肯定の証。私はそう思って隣に座らせてもらった。
(だって…、そうでしょう?)



「…夕日…、綺麗ですね…」


「………。」


「なんで、十四朗さんはいつもここで夕日を見ているんですか?」


「…別に」


「…そうですか」


十四朗さんとはあまり会話が続かない。
まあ、それは仕方ないのかもしれない。
十四朗さんは元々、誰かとつるむ…、って言ったらおかしいかもしれないけど、好きじゃない。
でも、近藤さんやそーちゃん以外に、私と話してくれる、っていうのがものすごく嬉しい。



「…今日の夕飯、なにがいいですか? 今日は十四朗さんが好きなもの、おつくりしますよ?」


言ってから気が付いた。
…これは…、あきらかに積極的過ぎたかしら!?
そしたら急に恥ずかしくなって。
私は十四朗さんの顔が見れなくなった。



「…そば。」


「…え?」


十四朗さんがボソッ、と呟いた。
おそばは私も大好きですけど…。
十四朗さんって…、そこまで好きでしたっけ?


「マヨネーズはあんだろ?」


「え、あ、はい。」

十四朗さんが来たときのために、私の家には大量のマヨネーズがある…けど。

その前に…
十四朗さんと目を合わせて会話出来てる…。

顔…、熱い…です。
わからないですよね?夕日だってあたってるんだから…


「じゃ、旨ェの頼むわ。」
「あ…はい。」


私がそう言うと、竹刀を持って道場のほうへ向かった十四朗さん。



「……よーし、美味しいの、作らなきゃ!」


そして、私は台所に向かった。















十四朗さんが好きです。



この気持ちを伝えれば貴方は私を受け入れてくれますか?


きっと、無理…、だと思う。


それでも、時折、近藤さんにもそーちゃんにも見せない夕暮れの中でも真っ赤だってわかる顔は、
私は…特別、って思っていいんですよね?十四朗さん。



きっと、長くは続かないと思うけど、
今は…、この幸せな、大好きな人達がまわりにいる日常が続きますように…。






夕日の赤と君の赤
(十四朗さん!おそば、出来ましたよ!)(ああ、今行く。)

 

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