小説

□キミにメロメロ
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僕がメロ子を作ろうと考えたのはいつの事だったのか、ただ夢中になって父さんと同じくロボットを作る夢を追いかけていた僕は父さんが死んだあと、母や学校へ行く兄妹達を支える為に機械系の工房で技術を磨きながら働く傍ら密かにロボットに使う部品を買い集めていた。

母も死んで、皆いなくなって、必要な部品も機材も揃えた僕は仕事を辞め、一人誰もいない家でゆっくりと作業を始めた。

起きてから寝るまで、一日一食の生活で僕は彼女を作り続けた。時には夜遅くまで起きて、子供みたいに夢中になって。


ふと、休憩の為にコーヒーでも淹れて飲んでいると、昔、僕達と一緒に玩具を作ってくれた父さんは僕達以上に集中してしまって、途中から作り方が解らなくなってしまい妹が大泣きしてしまう、なんて事件もあったことを思い出す。

「やっぱり僕は父さんの子供だね…」

飲み終わってコーヒーカップを洗い、作業に戻ると、また無言の時間が流れる。






「オーギュスト、お前には才能があるぞ。将来、父さんと一緒にロボットを作らないか?」

「お前が羨ましいな、手先が器用で、俺は不器用だからな」

「お兄ちゃん、お人形さん直してくれてありがとう!」



「オーギュスト…無理させてごめんね…良いお嫁さん、見付けるんだよ」





「母さん、俺、女の子との交流なんて妹と母さんぐらいしかないよ。そうだなぁ…じゃあこのロボットは女の子にしよう。そしたら母さんも安心するだろ?父さんの夢も同時に叶えられるしさ」





粗方本体が出来上がったら次はパソコンと向かい合って、プログラムを作る。

学習型になるように悩みながらプログラムを組んでいくが、上手くいかず立ち止まったり、気持ち悪いぐらい快調に進む時もあった。



「発話プログラムが上手くいくと良いんだけど…ま、後で不備があったら書き換えれば良いし…」



不安になりながらも脳に当たる部位に出来上がったプログラムを入れ、微調整を加えて、また本体を完成させるために走り回って。



「あ、コンセントどうしよう…変な所に付けるとカッコ悪いしなー…いっそ尻尾みたいに…ま、服着れば解らないか」



僕の趣味も段々と迷走していくのでした。







「あとは…コンセントを…差して…ふぁあ…」


大きなあくびを一つして、コンセントを差し込むと、完成した彼女の機体の髪を一撫でして寝室のベッドに飛び込んだ。






『よくやったな、オーギュスト。完成おめでとう』

『父さんの設計図を基に作ったんだ。父さんのお陰だよ』

『でも、完成させたのはお前だ。よく頑張ったな。ほら、誰か呼んでるぞ』

『え?ぅ、うん』





……すた……


…ますた……


…マスター…






「マスター」


目を覚ませば目の前にいたのは裸の彼女。充電も終わって勝手に動き始めた彼女はコンセントを抜き歩き回り僕を見付けて起こしたようだ。


「ブハッ!ち、近い!胸が近い!」

我ながら良い出来…じゃない!

寝ていた僕の事が気になるようで『そんな姿』で僕の腰辺りで馬乗り、前のめりになって僕の顔を覗き込んでいる。

「マスター、オハヨウゴザイマス」

「え、うん…おはよう…」

どこのラブコメだろうか、裸の彼女が今にも顔と顔が触れ合いそうな処まで顔を近付けていて、心音が相手に聞かれそうな気がして思わず顔が赤くなる。

「そう言えばおはようって…あぁ、僕次の日まで寝ちゃったのか…」

上手く誤魔化すようにそう言って起き上がり、まだ名も無い彼女に優しくタオルを掛けてあげた。

「服、買ってあげなきゃね…とりあえず僕の服貸してあげるからそれを着て街に行こうか」

「ハイ」

僕が持ってる服でも彼女に似合いそうな服をタンスの奥底から引っ張り出し、彼女に服の着方を教えてあげた。プログラムは上手くいったようで、すぐに覚えてくれてなんだか嬉しい。
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